6. 空気ばねパンク時の走行安全性評価法

車両の空気ばねは、機器や配管の損傷によりパンク状態となる場合があります。また救援時は、垂直座屈を防止する観点からこれを意図的にパンク状態とする場合があります。こうした条件では車体上下支持剛性が大きくなり、軌道平面性に対する追従性能が悪化して輪重減少が拡大するため、 曲線諸元に応じ走行安全性を評価する手法を考案しました。

図1は、半径300mの出口側緩和曲線において、ある車両の車輪上昇量が2mm以下あるいは、脱線係数が目安値(修正円弧踏面、0.95)以下となるカントの量と逓減倍率の組み合わせを解析で求めた例を示しています。ここで上昇量2mm以下とは、車輪がフランジ直線部の1点でレールと接触しない、即ち乗り上がりを開始していない条件です。同図のように、空気ばねパンク状態では、脱線係数が目安値を超過しても、乗り上がりを開始しない領域があることがわかります。そこで、乗り上がり現象に対する安全性を直接判断するため、車輪上昇量を指標とすることを提案しました。

車両形式や種々の条件を変えて図1のような線図を予め準備すれば、空気ばねパンク状態の走行安全性を鉄道事業者が評価可能になります。図2はそうした評価のイメージで、該当条件の線図に救援あるいは回送の経路に介在する曲線の諸元をそれぞれプロットし、上昇量2mmを閾値として安全性の判定が可能になります。

上記手法で安全性が低いと判定される曲線については、出口側緩和曲線の内軌側レール頭頂部に摩擦緩和剤や水などを塗布または散布することで、車輪の上昇を抑制可能であることを鉄道総研の構内試験線で確認しました。本手法を用いれば、空気ばねパンク状態で救援や回送を行う場合に、こうした対策を講じるべき要注意箇所を予め抽出可能になります。