25. 実測値と解析値を融合させた橋りょうの維持管理指標の推定法

列車の高速化や構造物の経年変化に対応して鉄道橋の安全性を高頻度かつ高精度に評価するため、近年では小型で常設可能な加速度による常時モニタリングが普及しつつあります。しかし、従来の列車通過時の波形処理技術だけでは、測定した加速度波形から鉄道橋の列車通過時の変位、衝撃係数、固有振動数、減衰定数等の諸元を実務に必要な精度で得ることが困難でした。

そこで本研究では、列車が通過した際の測定波形と数値解析を融合させることで、実橋りょうの変位や固有振動数等の維持管理指標を高精度に推定する手法を新たに開発しました(図1(a))。本手法では、実測値と解析値を比較しながら解析への入力値の補正計算を統計的に繰り返す機械学習により、1箇所だけの加速度波形から鉄道橋の維持管理に必要な固有振動数や最大変位を効率的に推定できます。特に実測値を機械学習する際の高速性と安定性を両立させるために、繰り返し計算においてパラメータを確率的に判断して更新するベイズ推定アルゴリズムを開発しました。提案手法の推定精度は、数値解析および実橋りょうで測定した列車通過時の加速度波形により検証しており、従来のような測定波形の処理のみでは推定困難であった列車通過時の最大変位を誤差5%程度で推計できるとともに、固有振動数や減衰定数の推定誤差を平均で従来の約50分の1まで低減できます(図1(b))。

提案手法により約5分間で橋りょうの固有振動数や最大変位を推定でき、現場で橋りょうの状態判断が可能です。本手法を加速度モニタリングに適用することで、これまでは困難であった加速度波形に基づく常時監視や弱点橋りょうの抽出、補修・補強の優先順位付けが可能になります。