28. 意思決定スキル評価のための作業課題の開発

鉄道の作業現場では意思決定エラー(判断ミス)が事故の原因となることがあります。このエラーを防止するためには、個々人の判断の傾向を把握した上で評価し、教育訓練を実施することが必要です。ただし、判断の傾向を実際の作業の中で把握することは難しいことから、パソコン上でその傾向が確認できる作業課題を開発しました。さらに、機能的核磁気共鳴断層画像法(functional Magnetic Resonance Imaging 以降、fMRI)を用いて、開発した作業課題を行うと判断に関連する脳領域が活性化することを確認しました。

鉄道の事故分析データから得られた278件の判断ミスの事例を分析し、判断ミスが発生した作業場面と判断の傾向をそれぞれ検討した結果、確認に関わる作業場面が全体の60%以上を占めること、また、70%以上の事例で近視眼的な判断をする傾向があることが判りました。そこで、判断ミスにみられるこれらの特徴に着目して、作業後に確認を省略するかどうかの判断が求められる場面を再現した作業課題(図1)と、短期的メリットと長期的メリット(すぐに分かるメリットと徐々に理解できるメリット)を考慮に入れて判断を下す作業課題を開発しました。また事故の発生頻度は少ないですが重要な場面として、異常時を想定した判断が困難な場面を再現した作業課題も開発しました。

図1は確認場面を再現した作業課題で、特定の文字が複数あるかをチェックする場面と、チェックした結果を再確認するかを求められる場面から構成されます。この作業課題を実施中の脳活動を測定したところ、判断に関わる脳領域(島皮質)が活性化していました(図2)。この結果は本課題の内容と対応しており、判断を再現した作業課題として適切であることが明らかになりました。