21. 遅延の影響度に基づく遅延対策支援システム

 慢性的な列車遅延の発生は、利用者の利便性を低下させる要因となります。
 このため、列車運行の定時性向上と、そのための方策を検討する業務の効率化を目的に、余裕時分の付加などの遅延対策を優先して実施すべき列車や駅を抽出する手法を開発しました。

 遅延対策においては、遅延が他の列車に広範囲に波及する箇所を優先して対策すれば、少ない対策で効果的に遅延を縮小できることが経験的に知られています。
 そこで、遅延が波及しやすい列車と駅の数を遅延の影響度を表す指標として新たに定義し、日々の実績遅延データから各箇所の遅延が波及した範囲を特定したうえで、遅延の影響度を定量評価する手法を新規に構築しました。
 次に、一定期間(1ヵ月など)の影響度の平均値が大きい箇所を、優先して遅延対策を検討すべき箇所として抽出する手法を考案し、これらを搭載した遅延対策支援システムを開発しました。
 本システムにより、効果的な遅延対策の検討・立案を、従来の1/5程度の期間で行うことが可能となり、定時性・利便性の向上と業務の効率化を同時に実現できます。

 本システムを、実在する3路線に適用した結果、システムが算出した影響度の大きい箇所はダイヤ担当者が認識していた要対策箇所と一致することを確認しました。
 さらに、システムが抽出した箇所に対し、ダイヤ改正時に遅延対策として、各駅合計で90秒の余裕時間の付加と、始発駅における着発番線の変更を実施したところ、対策箇所とその周辺での遅延が縮小し、本システムの妥当性と有用性を確認しました(図1)。