20. 貨物輸送を対象にした災害対策の投資効果の評価手法

 自然災害が激甚化・多頻度化するなか、鉄道貨物輸送の災害レジリエンスの向上に繋がる効果的な災害対策が求められていますが、その投資効果を定量的に評価することが困難でした。
 この課題を解決するため、まず、災害によって鉄道ネットワークに不通区間が発生している期間の、迂回輸送やトラック代行輸送等も含めた貨物輸送量Q(以下、不通時輸送量)と、その際の鉄道貨物事業者の負担コストL(以下、災害時コスト)を定量的に算出する手法を開発しました。
 開発した手法の妥当性については、被災前と被災後の貨物輸送需要を同一としたうえで、過去の災害時の貨物輸送実績データを用いて検証したところ、長期連休による一時的な需要減少期間を除いて、不通時輸送量を精度良く推定できることを確認しました(図1)。

 次に、災害対策の投資効果を評価するため、鉄道ネットワークに対して災害対策が実施されているケースと未実施のケースにおける、不通時輸送量の差分 ΔQ(指標①)と、災害時コストLと災害対策への投資コストIの和(総災害コスト)の差分 Δ(L+I)(指標②)に着目した手法を開発しました。
 不通時輸送量Qと災害時コストLは、先に述べた定量化手法で計算します。これにより各災害対策の指標①と指標②を求め、それぞれの投資効果を評価します(図2)。

 本手法は、貨物駅の設備強化による災害耐力の向上(ハード対策)やトラック代行経路の拡充(ソフト対策)といった各種災害対策の立案、および鉄道ネットワーク内で重点的に対策を実施すべき箇所の抽出等に活用できます。
 また、貨物輸送量を旅客輸送量に置き換えることで、同じ鉄道ネットワークを利用している旅客輸送を対象とした災害対策も、同様に投資効果を評価できます。