21. 通勤列車内日射環境の温熱快適性評価手法

 通勤列車内の温熱環境に対する「暑い」、「寒い」といった乗客からの声は多く寄せられています。
 この列車内の温熱快適性には、気温、湿度、風速、日射など様々な要素が影響します。
 このうち特に日射量は、列車の走行位置やその向きにより大きく変化し(図1)、これが乗客の温熱快適性に大きく影響しますが、その影響を踏まえた温熱快適性を定量的に評価できる方法がありませんでした。
 そこで、車内日射環境を模擬した被験者実験(図2)を実施し、その生理・心理的影響を把握したうえで、日射影響を加味した温熱快適性評価手法(図3)を提案しました。

 提案手法は、日射や車内の風速などの車内温熱環境を入力として、体温調節機能が実装された温熱生理モデルにより、生理状態を反映した身体部位ごとの体感温度を計算します。
 次に、全身の平均体感温度および最高・最低体感温度と、過去に実施した被験者実験データに基づく統計モデルにより、対象環境に対して満足できない乗客の割合(不満足率)を予測します。
 当該モデルは、全身の平均的な感覚に加え、局所的な感覚も考慮されるため、身体の一部に日射を受けるような複雑な環境に対しても適用できます。
 提案手法による不満足率の予測値と実測値の相関係数は0.90であり、提案手法は十分な再現性を有することを確認しました(図4)。

 提案手法は、空調制御の改善や窓の日射透過率低減等の効果あるいは窓開け換気の影響に対する、温熱快適性の観点からの定量的な評価に活用できます。