第331回 鉄道総研月例発表会
日時 | 2019年07月31日(水) 13:30~16:40 |
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場所 | 東京 日本工業倶楽部 大会堂 |
主題 | 鉄道構造物の新設、既設補強に関する研究開発 |
プログラムと発表内容
(関係研究部 構造物技術研究部)
平成28年4月に発生した熊本地震や、平成30年7月豪雨では、鉄道構造物に被害をもたらし、鉄道運行に支障を及ぼした。一方、大都市の駅部などは利便性向上を目的としたリニューアル工事が増加しつつある。このように鉄道構造物を取り巻く技術課題は、新設建設や既設改良から災害対策と広範に及ぶ。ここでは、鉄道総研が取り組む鉄道の新設構造物の設計技術、既設構造物の補強・リニューアルに関する研究開発の方向性を、本日の発表件名の研究開発事例を示しつつ、概説する。
鉄道総研報告 Vol.30 No.12 「PCT形桁を用いた補強盛土一体橋梁の設計法」
施設研究ニュース No.317「PCT形桁を用いた補強盛土一体橋梁の設計法」
鉄道総研報告 Vol.30 No.5 「液状化におけるシートパイル補強工法の耐震設計法の提案」
施設研究ニュース No.292 「シートパイル基礎の設計・施工マニュアルの改訂」
- 発表者
- 構造物技術研究部 部長 神田 政幸
鉄道構造物に対して、短繊維補強コンクリートが適用される場合がある。このうち、鋼繊維補強コンクリートは、ひび割れ幅抑制を期待して連続合成桁の中間支点部などに用いられるが、さびの発生により美観が低下することが懸念される。そこで、さびが発生することのない玄武岩由来の無機繊維であるバサルト繊維に着目し、これを用いた短繊維補強コンクリートを開発した。本発表では、開発した短繊維補強コンクリートの基本的な物性、および経年の影響を考慮した短繊維補強コンクリートの性能評価法を紹介する。
RRR Vol.75 No.6 「短繊維補強コンクリートにより鉄道橋りょうのひび割れを抑制する」
- 発表者
- 構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室 主任研究員 仁平 達也
近年の地震により、ストッパー周辺の桁座・桁端が多数損傷した。ストッパー周辺の桁座・桁端の損傷過程や破壊性状等は明らかとなっておらず、復旧性を考慮した設計はおこなっていない。そのため、地震で生じ得る損傷の状態は不明確であり、損傷の状態によっては復旧に時間を要することがある。本発表では、復旧性の向上を目的とし、地震によるストッパー周辺の桁座・桁端の損傷メカニズムを明らかとし、その設計法を提案したので紹介する。
- 発表者
- 構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 副主任研究員 轟 俊太朗
現行の配筋に関する照査の前提を小断面ボックスカルバートに適用した場合、帯鉄筋の間隔が非常に小さくなり、施工が困難になる場合が多い。そこで、載荷実験および解析から、配筋詳細が軸方向鉄筋の座屈や変形性能に及ぼす影響を検討した。本発表では、小断面ボックスカルバートにおいて遵守すべき帯鉄筋の間隔やその適用範囲などについて紹介する。
鉄道総研報告 Vol.26 No.11 「配筋詳細が鉄筋コンクリート部材の変形性能におよぼす影響」
- 発表者
- 構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 副主任研究員 中田 裕喜
近年、踏切除去や河川改修等を目的として、線路直下を小さい離隔で線路下ボックスカルバートを新設するトンネル工事が数多く実施されている。この工事では、鉄道への影響を最小限に抑えるため、小断面を連続的に掘削する特殊工法を採用するとともに、地上側の安全対策として簡易軌道桁が敷設される。本発表では、小断面掘削時の地盤挙動を把握のうえ、簡易工事桁の設計法を取り纏めたので紹介する。
- 発表者
- 構造物技術研究部 トンネル研究室 主任研究員 仲山 貴司
擁壁や橋台などの抗土圧構造物は橋梁、土構造物との境界部に構築され、その周辺には道路、河川、宅地などが存在する場合が多い。このため、耐震補強の必要性が高い一方で、補強対象が膨大なため、効率的な補強も求められる。また、隣接構造物の存在や用地境界等の施工上の制約が多いことも特徴である。このような課題に対して、鉄道総研が開発した抗土圧構造物の耐震補強工法およびその施工例を紹介する。
鉄道総研報告 Vol.32 No.2 「狭隘な場所の既設橋台の耐震補強工法と設計法概要」
- 発表者
- 構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 主任研究員 中島 進
近年、鉄道地下鉄駅の商業利用や出入口の増設、線路増設などのため、既設の開削トンネルの側壁の一部を撤去して開口を設置するリニューアル工事が増加している。この場合、開口部分がこれまで担っていた荷重は開口周辺の部材に再配分されるため、この影響を精度良く把握することが重要となる。本発表では、三次元FEM解析によりこの影響を把握のうえ、二次元骨組解析モデルを用いた設計法を取り纏めたので紹介する。
- 発表者
- 構造物技術研究部 トンネル研究室 主任研究員 仲山 貴司
特定鉄道等施設の地震に対する安全性を向上させるための耐震補強の実施について努力義務を課す耐震省令が、平成25年4月1日から施行になった。その中で旅客上家が対象となったが、旅客上家には耐震性能の評価方法が定まっていなかった。そこで、鉄骨造旅客上家に対して、構造形態や構造種別に応じた耐震性能の評価方法を検討し、鉄道事業者における耐震診断業務で運用可能な耐震診断指針を整備したので紹介する。
- 発表者
- 構造物技術研究部 建築研究室 主任研究員 清水 克将
駅の空間評価に関しては、パース等を用いた検討がなされてきたが、昨今のITの進歩により、3次元CADやBIM、モデリングソフトを利用した、視覚的によりわかりやすい空間提示が可能となっている。今回、駅の案内サイン等の見え方や空間の評価などにVRを用いた実験を実施し、旅客流動シミュレーションにその機能を追加したので、これらを中心に駅でのVRの活用について紹介する。
RRR Vol.65 No.6 「駅空間の快適性を向上する」
RRR Vol.67 No.4 「バーチャルリアリティ技術を用いた駅の安全性・快適性評価」
Ascent No.6 「Approach to Make Stations More Comfortable」
- 発表者
- 構造物技術研究部 建築研究室 副主任研究員 石突 光隆