新材料(FCD900)歯車を用いた歯車騒音低減対策の研究

電動車の駆動系騒音をさらに低下させ付随車並の騒音レベルに近づけるには、主電動機の騒音とともに歯車装置の騒音も低下させる必要があります。

歯車装置の騒音は、小歯車と大歯車の回転にともない発生する、かみ合い変動力が主な起振源となります。歯車箱へ振動伝搬してその表面から音響放射することにより騒音が発生します(図1)。かみ合い変動力を低減することは低騒音化対策の上で有効と考えられます。

動力システム研究室では球状黒鉛鋳鉄 (Ferrum Casting Ductile) の強度タイプであるFCD900を候補に低騒音歯車の開発を進めております。FCDは従来鋼に比較すると振動減衰性能(材料減衰性能)に優れるほか、歯車に用いた場合は歯面のなじみ性にも優れる点が挙げられます。なじみとは、初期摩耗により歯面の粗さが均一化されることであり、これによりスム−ズなかみ合いが得られるようになり、歯車かみ合い変動力が変化し、振動および騒音が低下することが期待できます。

FCD900の縮尺歯車の回転試験を図2に、試験結果を図3に示しました。FCD900はすば歯車は、歯面粗さが同一条件の従来はずば歯車より騒音レベルが約7dB(A)低くなる傾向を示します。また、一定時間(48~80h)の連続回転により歯面のなじみとみられる騒音低下効果が現れる傾向を示しました(文献1)。

また、実車歯車のかみ合いを再現して振動及び騒音解析を行うシミュレーション手法の研究も進めております(図4~図6)。

参考文献

  1. 笹倉実,鈴木史比古,三神圭司:鉄道歯車装置の振動騒音解析手法と高強度球状黒鉛鋳鉄を用いた歯車振動低減の研究,鉄道技術連合シンポジウム(J-rail2013)講演論文集,pp.125-128,2013