シェルター型ホーム

地上ホーム空間は屋外であるため、天候などによっては必ずしも快適な空間とはならない場合があります。そこで、地上ホームを壁と屋根で覆うことでシェルター化することで快適性を向上する技術を開発しました。

ホームをシェルター化すると、ホームから線路への転落を防止できること、ホーム上に待合室の壁などが不要となり空間が拡大すること、ホーム上への風雨の吹き込みを防止できることなど多くの利点が期待できます。一方で、照度の低下や、夏季における気温上昇などの欠点が生じる可能性もあります。また、高架橋も含めて新設する場合と異なり、既設の高架ホームをシェルター化する際には、壁やホームドアなどの重量増により既設高架橋への負担が増すため、設置が困難となることが考えられます。

そこで、本工法では、屋根を膜材に変更することなどで軽量化を図りました。多くの既設高架駅ホームの屋根には、鉄板やスレートなどの材料が用いられており、かつホーム上に雨が吹き込まないように線路上まで張り出して設置されています。本工法では、屋根を膜屋根に取り替えること、および、壁が雨よけとなるので、屋根の設置範囲をホーム直上のみに縮小できることから、屋根の大幅な軽量化を実現し、既設高架橋上への設置が可能となりました。また、膜材は太陽光を透過するので、シェルター化の欠点の一つである照度低下の防止にも寄与します。

一方、夏季温熱環境の悪化を低減するには、十分な換気量を確保するための開口部を設ける必要があります。そこで、模型実験などからホーム上の気温を外気温よりも過度に高くならないようにするための開口量を明らかにしました。

以上の工法により、建設コストを抑えつつ光環境と温熱環境に配慮して安全・快適なシェルター型ホームを構築することが可能となります。

参考文献

  1. 伊積康彦、清水克将:地上駅をリニューアルする、RRR、Vol.73、No.1、pp.24-27、2016.01