簡易着脱式スリップリング装置
1.はじめに
鉄道車両の走行安全性を評価するためには、走行中の車輪・レール間の鉛直方向の荷重(輪重:P)と左右方向の荷重(横圧:Q)を精度よく測定することが重要です。 輪重・横圧の測定(PQ測定)を行うために、車輪にひずみゲージを貼り付けた輪重横圧測定輪軸(PQ軸)を用いることが国内では一般的です。PQ軸による測定においては、回転する車輪から車上にひずみゲージの信号を伝達する必要があります。この信号伝達は、軸端に装着したスリップリング装置により行うことが一般的です。特に連続的に輪重や横圧を測定するためにはロータリーエンコーダーを内蔵したスリップリング装置を用います。輪重・横圧連続測定の概念図を図1に、スリップリング装置を装着した状態の台車を図2に示します。
スリップリング装置を装着する際には、PQ軸から引き出された配線と、スリップリング装置側の配線をはんだ付けする必要があります(図3)。このはんだ付け作業は、試験に供される車両の留置可能場所・時間の制約から、作業性の悪い場所で短時間の内に施工する必要がある場合があります。
2.簡易着脱式スリップリング装置の構成・効果
試験車両留置場所での作業時を短時間、かつ簡便にする目的で、簡易着脱式スリップリング装置を開発しました。 簡易着脱式スリップリング装置は端子台部を有するスリップリング装置本体部と軸端側端子台から構成されます(図4)。 簡易着脱式スリップリング装置のPQ軸への接続方法について、現行装置を用いる場合と比較した模式図を図5に示します。簡易着脱式スリップリング装置を使用すれば、時間的猶予があり、作業性が良好な現場外で予めPQ輪軸-軸端側端子台とのはんだ付け作業を済ませておき、現場ではスリップリング本体を端子接続するのみになります。したがって、輪重・横圧測定のための仮設作業を、現行装置を使用する場合よりも効率的に行うことが可能となります。
