21. 高頻度軌道検測データを活用した軌道保守計画策定システム

営業車両に搭載した軌道検測装置による軌道変位(狂い)の高頻度検測は、2009年に九州新幹線で実用化され、その後は在来線も含めて営業車への検測装置の搭載が進められています。この高頻度検測では、多くの測定データを取得できるため、効率的なデータ処理による軌道状態の高精度な予測、診断手法を確立する必要があります。そこで、高頻度検測データの適切な処理・活用法を提案し、軌道保守計画策定システムを開発しました。

 高頻度検測データに適した軌道変位進みの新たな算定法を提案し、ある線区に適用した結果、1年後の軌道変位の標準偏差を±0.16mm以下(97%確率)の精度で予測できました(図1)。このとき、過去半年以上の履歴データを用いれば、検測周期を半月程度としても十分に高い予測精度を得られます。また、軌道変位が季節変動する箇所についても予測手法を提案し、半年後の軌道変位を同程度の精度で予測できました。さらに、軌道変位保守の効果の持続性に着目した道床状態の診断法と、軌道変位進みの長期的傾向と直近値の差異に基づく軌道変位急進性の診断法を提案し、従来頻度検測データでは難しかった道床不良箇所や軌道変位の急進箇所を抽出できます。

以上の成果を用いて、高頻度検測データ対応版軌道保守計画策定システムを開発しました(図2)。高頻度検測データを適用した軌道変位保守計画では、従来頻度検測データに基づく計画と保守箇所が10%異なり、より実状に近い計画を得ました。軌道変位の急進性や道床状態の診断にも活用できます。