27. 編成車両の地震時挙動シミュレーション
鉄道車両間は、連結器や車体間ダンパ等により連結されています。
地震発生時には、車両ごとの特性の違いや編成内での位置により異なる地震動の影響により、それぞれの車両が異なった挙動をすることで相互に影響を及ぼしあいます。
この車両間で発生する力のやり取りが脱線や脱線後の車両の挙動に及ぼす影響は明らかではありませんでした。
そこで、連結の影響を考慮した編成車両の地震時挙動シミュレーション手法を開発しました(図1)。
本手法では、車両運動表現用のマルチボディと、車輪・レール間等の接触現象表現用の有限要素を組み合わせて個々の車両をモデル化します。
また、車両間の連結を表現するばねやダンパの特性とその位置を設定することにより、例えば減衰力のリリース機能を備えた車体間ダンパ等、車両が連結する構造をモデル化することができます。
さらに、本手法では、脱線前から脱線後までの一連の車両挙動の計算が可能であり、脱線対策工や逸脱対策工等の軌道部材とモーター等の車両部位の、3次元形状を考慮した接触現象も表現できます(図1)。
図2に開発手法による3両編成での計算例(正弦波加振)を示します。
3両とも同位相で加振した場合には脱線が生じないのに対し、2両目のみ逆位相で加振した場合には、連結構造を介した車両間での大きな力のやり取りが発生することにより、早期に脱線が生じる様子を確認できます。
なお、本手法では、走行時における車輪・レール間の接触計算を一部簡略化(クリープ力計算を省略)することで、実用的な計算速度を実現しています。
本手法は、より現実に近い条件での地震時における脱線事故の原因究明や、脱線や逸脱の防止対策を検討するためのツールとして活用できます。