29. しゅう動履歴を考慮した集電材料の摩耗形態推定手法
トロリ線やすり板等の集電材料は、主に摩耗によって寿命を迎えるため、摩耗管理や交換作業等に多くの労力がかかっています。
集電材料の摩耗進展を左右する摩耗形態について、これまで一定の条件で発現するメカニズムは実験によって解明されてきましたが(図1)、実フィールドの摩耗現象を説明するためには、変動するしゅう動条件の履歴を考慮する必要がありました。
そこで、摩擦や通電によって発生する熱がすり板に蓄積されることに着目し、加えて摩耗面の状態が時々刻々変化することも考慮して摩耗形態を推定する手法を提案しました(図2)。
本手法では、パンタグラフのしゅう動速度・集電電流等のしゅう動履歴と、トロリ線偏位等の架設構成に基づいて、摩耗形態を推定します。
定置試験において、しゅう動速度を連続的に変化させた際に確認された摩耗形態(図3上段)と、本手法で求めた接点温度の波形から推定した摩耗形態(図3下段)が整合することを確認しました。
今後、本手法と架線 - パンタグラフシミュレーションとの連携により、実フィールドにおいて摩耗の進展を予測する手法へと展開します。
さらに、すり板温度の観点から、トロリ線の局部摩耗を防ぐトロリ線偏位構成等の検討へ活用する予定です。