24. 集電系のリアルタイム異常検知によるパンタグラフ自動降下システム

 パンタグラフや電車線に異常が発生すると、連鎖的に広範囲な電車線の損傷や編成内のパンタグラフ全損等が発生し、大規模な輸送障害につながる場合があります。
そこで、車上にカメラを設置して集電系をリアルタイムでモニタリングし、その画像から異常を検知した際にパンタグラフを自動降下させるシステムを構築しました(図1)。
検知対象は、過去の大規模輸送障害の記録から、パンタグラフの部品脱落と電車線に付着した飛来物にしました。

 パンタグラフの部品脱落については、物体検出AIと座標処理を組み合わせた検知アルゴリズムを開発しました。
本アルゴリズムは、パンタグラフすり板の段付き摩耗や異常アークの検出にも対応しています。
また、電車線に付着したビニールシートや布団等事前学習が難しい飛来物については、学習データが不要かつ抽象的な表現で検出対象を指定可能なAIと電車線範囲設定とを組み合わせた検知アルゴリズムを開発しました。
所内試験の結果、パンタグラフの部品脱落は1秒以内で検知でき、また飛来物はカメラから最大40m先まで検知可能で、いずれも誤検知や見逃しなく検知できることを確認しました。

 本システムにより、集電系に起因する設備損傷の連鎖を回避することができ、自走能力の確保や設備復旧時間の短縮によるダウンタイムの低減が期待できます。