26. 通勤列車の空調ログデータを活用した温熱快適性評価手法

 通勤列車内が暑い/寒いという乗客からの不満の声は毎年多く寄せられています。 これに対し、鉄道事業者では、設定温度の調節や、実測調査による実態把握等により快適性改善に努めています。 一方で、設定温度の調節によって乗客全体の快適性がどの程度改善されたかの客観的 ・ 定量的な判断は難しく、また、車内温熱環境の実測調査には多くの人的リソースが必要となります。

 そこで、日々蓄積されている通勤列車の「空調ログデータ」(図1上段)と、温熱感覚の特性や個人差を考慮した「集団の温熱快適性評価モデル」(図2)を活用することで、実測調査に多くのリソースを割かずに車内温熱環境の実態を捉えつつ、乗客全体の快適性を客観的・定量的に評価する手法を提案しました。 提案手法では、空調ログデータに記録されている車内温湿度や乗車率、外気温等を入力として、乗客の服装や姿勢(立位/座位)を考慮した車内の体感温度を算出し、さらに、過去の通勤列車内での実験データに基づいて、乗客の何割が暑くて/寒くて不満かを出力します(図1下段)。

 鉄道利用者を対象に、営業列車内で温熱感覚の体感調査を実施し(延べ参加者:夏74名、冬60名)、提案手法は、参加者の暑い/寒い不満をよく評価できることを確認しました(図3)。 提案手法により、年間を通して通勤列車内の温熱快適性評価が可能となり、空調制御の改善策の検討等に活用できます。