25. 低コスト複合型上下セミアクティブサスペンションシステムの開発

 近年、新幹線電車の左右方向の乗り心地の向上に伴い、上下方向の振動が相対的に大きく感じられる場合があり、効果的な対策が求められています。
特に高速で走行する新幹線の上下方向の乗り心地は、左右方向とは異なり、車体が一体として動く「剛体振動」に加えて、車体の曲げ変形を伴う「弾性振動」の影響を受けます。
鉄道総研ではこれまで、上下方向の乗り心地を向上するために、減衰力の制御機能をもつ「可変減衰軸ダンパー」と「可変減衰上下動ダンパー」を複合させて用いる制振制御手法を提案してきました。

 本システムは、上記手法を実用化していくため、制振性能とコスト低減の両立を図ったものです。
具体的には、前記2種類の可変減衰ダンパーについて、自動車用部品の活用、および部品点数と加工工数の削減等により製造コストを低減しました。
また、車両の振動を検出するセンサーのうち台車に取り付けるセンサーについて、加速度センサーとジャイロを組み合わせて、センサー設置位置を1台車あたり2箇所から1箇所に削減しコストを低減しました(図1)。

 本システムを車両に取り付け、車両試験台で新幹線の実走行を模擬した加振試験を実施したところ、車体中央での上下振動加速度PSDピーク値は制御によって1/25に低減され、乗り心地レベル(LT値)で最大5.2dBの乗り心地向上効果が得られました(図2)。

 高速走行が想定される新幹線車両において、上下乗り心地を低コストで向上することができるシステムとして活用が期待されます。