空気流シミュレータ
計算力学研究室
複雑形状の流体解析を容易に実現することを目標に、直交格子法に基づく流体解析プログラムを開発しています。
特徴・諸元
1.はじめに
直交格子法は複雑形状の流れ現象に適用できる手法として近年注目されている数値シミュレーション方法です。計算格子が物体形状と一致しないため形状表現の精度は劣りますが、三次元CADデータから計算格子の自動生成が可能であり、複雑形状の流れの数値シミュレーションを従来の計算方法よりも容易に実行することができます。今後、計算精度の向上を進め、将来的には並列計算環境で大規模計算格子モデルを用いて複雑形状を有する鉄道の流れ現象を評価できる実用ツールの構築を目標に研究開発を行っています。
2.直交格子法による計算例
円柱周りに対する流体解析の例を図1および動画1に示します。直交格子法での計算格子は、2次元の場合は長方形、3次元の場合は直方体の集まりになります。そのため、円柱付近の計算格子は、図1のようなイメージとなります。ただし、流体計算においては、埋め込み境界法という手法を用いて、境界形状を実際の形状に近付けるための工夫も行っています。動画1は、解析結果を用いて渦構造を可視化したものです。
動画1:渦構造の可視化(円柱周りの流れ)はこちら(外部サイトへ移動します)
3.階層格子の利用
直交格子法に基づく流体計算を効率良く行うために、階層格子を用いた方法を開発しています。階層格子とは、計算格子に粗密を持たせたもので、流れ場の変化が大きい部分と小さい部分で格子の密度を変えることによって、格子点数を節約することができます。具体的には、Building-Cube Method(直交格子積み上げ法)を参考に、octree形式のデータ構造を用いて階層格子を生成しています。Building-Cube Methodは、大規模並列計算時のロードバランスを考慮した階層格子の生成法です。
図2は、2次元キャビティ流れに対して階層格子を適用し、計算した例です。この例では、階層レベルを増やすことにより、流れ場の変化が大きい壁面付近の格子数を増やしています。
4.複雑形状流れの解析例
パンタグラフ全体モデルの流体解析例を動画2に示します。ここでは、理化学研究所のスーパーコンピューター「京」を用いた大規模解析(計算格子数は100億点)を実施しました。パンタグラフ表面の時間平均圧力分布を風洞実験と比較したところ、良好な結果が得られることが確認できました。
横風を受ける車両周りの流体解析例を動画3に示します。計算対象は単線高架橋上の3両編成車両です。ここでは、自然風を模擬するために風洞実験で用いられる乱流境界層生成装置(バリア、スパイア、ラフネスブロック)も忠実に再現して、流体解析を実施しました。車両に生じる横力係数・揚力係数について風洞実験と比較したところ、良好な結果が得られることが確認できました。
動画2:渦構造の可視化(パンタグラフ全体モデルの流体解析) はこちら(外部サイトへ移動します)
動画3:渦構造の可視化(横風を受ける車両周りの流体解析) はこちら(外部サイトへ移動します)
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