“Hi-tram(ハイ!トラム)”の鉄道総研構内線、軌道線走行試験による研究成果

1.省エネルギー性能

架線・バッテリーハイブリッドLRVの“Hi-tram”は、車両落成後に鉄道総研構内線において車両としての基本性能確認試験を実施しました。そして、2007年11月から2008年3月まで4ヵ月半に亘り札幌市交通局軌道線(札幌市電)で冬季寒冷地における走行試験を行いました。バッテリー車載による省エネ効果検証の結果、総消費エネルギーで既存のインバータ電車よりも6~30%省エネを実現できることを確認しました。なお、2005年度より3年間は、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託を受けて実施しました。

2.急速充電技術

部材組合せ試験を行い、剛体架線とパンタグラフ摺り板の溶着が発生しないことを確認しました。 試験結果より、LRVの屋根上には急速充電専用パンタグラフを別途用意しなくとも、通常の集電用パンタグラフで兼用可能です。また、軸周接地ブラシに加え、軸端接地装置も併用することで接地抵抗値10mΩ以下を実現し、車軸軸受電食の恐れを払拭しました。

3.バッテリー航続距離

“Hi-tram”は、鉄道総研構内試験線、札幌市交通局軌道線(札幌市電)での走行試験において、車載バッテリー72kWhのみによる航続距離試験も実施しています。それぞれの航続距離試験では、以下の結果が得られました。

4.低温起動試験

低温環境下ではバッテリーの特性が悪化します。そこで、低温・降雪環境下の夜間に屋外留置した翌朝、低温状態(例:外気温度−11℃、バッテリー温度−7℃)で車両起動試験も行いました。 その結果、車両起動直後から主電流通電可能であり、問題がないことを連続1週間に亘り確認しています。

関連ページ

参考文献

  1. 小笠正道、田口義晃、末包洋士、前橋栄一、兎束哲夫、菅原淳:架線レスLRVの停車中急速充電システムの開発、鉄道総研報告、第22巻、第9号、pp.35-40、2008.09
  2. 小笠正道:架線・バッテリーハイブリッドLRVの開発、第212回鉄道総研月例発表会、2008.05