蓄電池電車の開発と車載電池の劣化評価

蓄電池電車の開発

2016年にJR九州他と共同で、リチウムイオン電池を搭載して非電化区間を走行できる交流架線式蓄電池電車BEC819系"DENCHA"を開発しました(図1)。蓄電池電車はブレーキ時に発生する回生電力を確実に再利用できるため省エネ性が高いことと、気動車と比較して騒音や保守費を低減できることが特長です。
鉄道総研が提案した主な技術は、1)蓄電池の充放電器(チョッパ装置)を追加搭載しないで済む蓄電池直結の回路構成(図2)、2)高電圧蓄電池では大規模となりやすい短絡事故を抑制するヒューズ配置です。車両落成後の走行試験では、消費電力量や蓄電池の温度等を評価(図3)し、様々な走り方や将来の劣化状態に応じて蓄電池の温度上昇を推定する熱モデルを構築しました。

車載リチウムイオン電池の劣化評価

鉄道車両に搭載されているリチウムイオン電池の寿命を予測するための劣化評価手法を開発しました。リチウムイオン電池の劣化は、主として高温時に時間とともに進展する保存劣化と、充電や放電の回数によって進展するサイクル劣化に分けられます。このうち、開発した手法が対象とするのは保存劣化であり、従来手法よりも長期間精度よく予測する性能に優れています。
車両制御回路用リチウムイオン電池に対しては、実使用環境での温度の季節変動を模擬した加速劣化試験(図4)において、電池容量の推移を精度よく推定可能でした。車両駆動用リチウムイオン電池に対しても同様に加速劣化試験を実施し(図5)、従来手法に比べて大幅に誤差の少ない電池容量の予測が可能となることを確認しました。開発した劣化評価手法は、設計段階での寿命予測や、使用開始後の交換時期の計画に活用できます。

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参考文献

  1. 交流架線式蓄電池電車のための主回路システムの開発と評価
  2. 温度変動に対応した鉄道車両用リチウムイオン電池の劣化予測手法