光切断法によるトロリ線断面形状測定手法

トロリ線の摩耗は残存直径で管理されていますが、現在の電気検測車では残存直径を直接測定するのではなく、トロリ線の「しゅう動面幅」を測定しています。トロリ線の断面を見たときしゅう動面が車両と平行かつ一直線であれば、しゅう動面幅から残存直径に正しく換算することが可能です。しかし、わたり線などでみられるような偏摩耗によりしゅう動面が一直線でない場合(図1)には、測定されたしゅう動面幅から残存直径に正しく換算できません。また、しゅう動面が一直線であっても、しゅう動面の近傍にすり傷などがあると、しゅう動面幅を正しく測定することができず、残存直径の評価が不正確となる場合があります。

そこで、新たなトロリ線摩耗測定手法として、光切断法を用いた残存断面積測定手法の開発を進めています。測定にはスリット光源とカメラを用いています(図2)。光切断法とは、測定対象にスリット光等を照射してできる反射光の像(光切断像と呼びます。)をカメラで撮影し、物体の形状を測定する非接触の形状測定手法です。この手法を応用することで、トロリ線下半分の形状を測定することができます。光切断法によって得たトロリ線下半分の形状と新品のトロリ線下半分の形状を比較すれば、2つの形状の差分から摩耗によって減少した部分の断面積がわかります(図3)。新品のトロリ線断面積から、摩耗した部分の断面積を差し引けば、現在のトロリ線の断面積が求められます。

この光切断法によるトロリ線断面形状測定手法について、鉄道総研の所内試験線で測定試験を実施し、屋外環境下においてもトロリ線の断面形状および残存断面積が高精度で測定可能であることを確認しました(図4)。なお、マイクロメータによる手測定結果との比較においては、光切断法で測定した残存断面積を残存直径に換算して精度評価を行いました。