電車線路設備耐震設計指針・同解説の改訂

2013年(平成25年)3月に「電車線路設備耐震設計指針・同解説」が改訂されました(図1)。「電車線路設備耐震設計指針・同解説」は、地震によって電車線路設備が倒壊もしくは列車の走行空間を支障するような損傷を防ぐことを目標として、そのための設計方法を示したものです。ここでは、電車線路設備耐震設計指針・同解説の改訂までの経緯と改訂内容を簡単に説明します。

土木構造物の設計方法については、鉄道構造物等設計標準(耐震設計)に示されており、電車線路設備については、電車線路設備耐震設計指針・同解説に示されています。地震時における電車線支持物の被害の多くは、高架橋上の電柱に発生しています。これは、高架橋等の土木構造物と電柱の固有周期が近く、共振したためであると考えられています。電車線支持物の挙動は土木構造物の挙動と密接な関連があるため、平成24年7月に鉄道構造物等設計標準(耐震設計)が改訂されたことに伴い、電車線路設備耐震設計指針・同解説の改訂を行いました。

図2に地震によって高架橋上の電車線柱に発生する応答値算定の考え方を示します。土木構造物と電車線柱の振動特性を適切に考慮するため、まず、土木構造物の設計に用いる地盤毎の地震動を高架橋に入力し、高架橋天端の応答値を算出します。そして、高架橋天端の応答値を電車線柱の基礎部に入力し、電車線柱の応答値を算出します。

図3に以上の考え方に基づいた耐震設計方法の手順について示し、今回の主な改訂内容について説明します。改訂した電車線路設備耐震設計指針・同解説では、耐震設計に用いる地震動と構造物の設計情報を表1のように整理しました。考慮する地震動は、電車線路支持物の応答値への影響を考慮して、「標準地震動」と新たに設定された「短周期が卓越した地震動」の両方のL2地震動としました。設計情報として、土木構造物の回転振動(ロッキング振動)の影響を考慮するため、回転水平比を新たに取り入れました。また、電車線柱に付加される重量物やコンクリート柱の曲げ剛性の特性を考慮して、電車線柱の固有周期を補正する手法を取り入れました。

表1 電車線路設備耐震設計に考慮する地震動と構造物設計情報
地震動
  • 標準地震動
L2スペクトルⅠ
L2スペクトルⅡ
  • 短周期の卓越した地震動
L2スペクトルⅠ
L2スペクトルⅡ
 考慮する構造物の
設計情報
  • 地盤種別
  • 等価固有周期 Teq
  • 構造物全体系の折れ曲がり点に対応する震度 kheq
  • 回転水平比 kθ