落雷条件を考慮した信号設備の雷害発生確率推定手法

1.はじめに

信号設備に対する雷害対策を実施するかを判断する際の重要な指標の一つに、対策による雷害低減効果を明確にできる雷リスク評価があります。しかし、現状では、雷の大きさや落雷位置までの距離に対する雷害発生確率が定量的に把握できていません。

そこで、落雷時に、信号設備を構成する地上敷設の信号ケーブル、架空敷設の電源線、およびレールに発生する過電圧を長期的に観測し、雷電流値(I)と測定地点から落雷位置までの距離(r)との比である落雷条件(I/r)との相関を把握しました(図1)。

2.成果概要

図1中の推定式を用いて、架空敷設の電源線、信号ケーブル、およびレールと接続される信号設備に雷害が発生する落雷条件を求めることができます。例えば、架空敷設の電源線と接続される耐過電圧が30kVの信号設備では、落雷条件(I/r)が200kA/km以上の時、雷害が発生する可能性があります(図1A点)。この推定結果が、実際に雷害が発生したときの落雷条件の調査結果と概ね一致することを確認しています。

また、落雷条件の発生確率を考慮することで、信号設備の雷害発生確率の推定が可能になります(図2)。例えば、半径10kmの範囲内ヘの落雷数が1,000回/年の地域にある耐過電圧30kVの信号設備では、雷害発生確率が0.36回/年・設備と推定できます。

本手法により、雷リスクを目標とするレベルにまで低減させるのに必要な信号設備の耐雷性能を明確にすることができます。

参考文献

  1. 新井英樹、小野雄人、藤田浩由:雷過電圧の観測に基づく信号設備の雷リスク評価、鉄道総研報告、第26巻、第7号、pp.11-16、2012.07