構造物振動の非接触測定技術(Uドップラー)

1.構造物診断用非接触振動測定システム「Uドップラー」

Uドップラーは、振動測定による構造物の検査 ・診断を、より簡単かつ安全に実施できるようにするために開発した、非接触振動測定システムです。バッテリーで8時間駆動し、1~数10m離れた構造物の振動(測定速度範囲:0.2mm/s~100mm/s、応答周波数範囲:DC~600Hz)を非接触測定できます。既に鉄道事業者に導入されており、現在は検査対象の拡大に取り組んでいます(図1~2)。

2.Uドップラーの導入効果

Uドップラーの採用により、構造物へのセンサの取付・撤去作業が軽減され、振動測定作業の効率化を図れるとともに、高所などの危険な場所の測定や地震後の検査作業などをより安全に実施できるようになります(図3)。

3.Uドップラーの補正技術

非接触測定センサは、センサ自体に揺れが生じると測定対象の振動を正しく測定できません。特に常時微動のような微小振動を屋外で測定する場合には、その影響が深刻です。Uドップラーは、内蔵した微動センサで本体の揺れの影響を補正する機能を有しています。また、レーザの照射方向と構造物の振動方向が一致しない場合も、内蔵センサで本体の傾きを測定して、振幅を自動補正できます(図4)。

4.高架橋の常時微動測定

本体の揺れによるノイズに強いUドップラーを用いれば、常時微動測定で高架橋の固有振動数を推定することができます。測定法の工夫により、振動モードも推定可能です。地震による高架橋の損傷度検査や復旧後の確認検査への適用を検討しています(図5~7)。

5.列車走行時の橋桁のたわみ測定

Uドップラーで列車走行時の橋桁のたわみを測定できます。Uドップラーは速度計ですが、専用のデータ解析ソフトを用いれば、測定現地でたわみ波形を確認できます。従来手法の適用が困難であった、河川や交通量の多い道路に架かる橋桁のたわみも測定可能です(図8~9)。