在来線車両の空気抵抗低減と省エネ効果
1.はじめに
鉄道の省エネルギー化は重要な研究課題の一つです。車両の走行抵抗は、機械抵抗と空気抵抗に分けることができます。機械抵抗が速度の1次式で表されるのに対し、空気抵抗は速度の2乗に比例します。そのため、列車の高速化が進むと、鉄道車両の走行抵抗に占める空気抵抗の割合が大きくなり、空気抵抗の低減が鉄道の消費エネルギーの低減につながります。
空気抵抗低減による省エネルギー効果を評価するために、鉄道総研の大型低騒音風洞(米原風洞)を用いた実験を行いました(動画1)。その際、空気抵抗測定の精度を上げるために、移動地面板およびスパイアで車両周りの流れを模擬しました。
※上記の動画は外部の動画サイトの埋め込みリンクです。
2.ユニットクーラーの空気抵抗低減
在来線車両の屋根上には、様々なユニットクーラーが搭載されていますが、1車両に2台搭載されているものを検討対象としました。風洞実験(図1)の結果から、ユニットクーラーの前後へのフェアリングの取り付けやユニットクーラーの連結(図2)により、空気抵抗が低減することがわかりました(図3)。
3.床下機器の空気抵抗低減
在来線車両の床下に取り付けられている機器(箱)は大きさが様々であり、車両の床下形状は凸凹しています。風洞実験(図4)の結果から、機器箱の断面形状を統一し、空隙を小さくすること(図5)により空気抵抗が小さくなることがわかりました(図6)。
4.床下機器の空気抵抗低減
空気抵抗低減による省エネ効果は、編成の車両数や走行パターン(列車速度)により異なります。ここでは、走行距離200km、最高速度130km/hの営業線を想定した区間を8両編成の列車が走行する場合の省エネ効果を試算しました。上述のユニットクーラーおよび床下機器の空気抵抗低減策により、8両編成の列車の空気抵抗低が最大で22%低減し、空気抵抗低減により消費エネルギーが5.4%低減すると試算されました。