DASによる早期地震諸元推定手法
1.成果の概要
鉄道沿線で取得したDASデータ1)を活用することで、地震波検知後2秒以内に震源位置を誤差10km未満で推定できます2)。開発手法により、従来の単独観測点データによる早期地震諸元推定手法(C-Δ法)で推定される震央位置の誤差と比較して、線路近傍で発生した地震(震央距離50km未満)の推定誤差が半減します2)。
2.DASを活用した早期地震警報手法のフロー(開発中)
鉄道沿線の既設光ファイバーケーブルに適用したDASで取得したひずみ速度波形に対し、P波検知点数が100点を超過後、複数データによる震源決定手法(HYPOMH:最尤推定法, Hirata and Matsu’ura, 1985)を使用して震源決定を実施しました2)。P波検知点数が20点増加するごとに震源決定の再計算を実施し、気象庁震源位置との誤差や震源計算時間等を求めました(図1、2)。図1、2で示す地震において、P波検知点数が320点付近(図1赤線)で気象庁震源位置との誤差が約数kmの位置に震源を決定できています。この際、1点目のP波検知時刻からの経過時間が、約0.7秒(図1青線)、320点のデータを使用したHYPOMHでの震源決定に要する計算時間が約0.06秒(図2桃色線)であることから、開発手法はリアルタイムで運用可能な手法であることを確認しました2)。
3.リアルタイム運用に向けた検討(開発中)
リアルタイムでの運用に際し、2で示した連続計算中に正解値を決定する必要があります。HYPOMHで算出される緯度、経度、震源深さの最尤推定誤差を活用し、1点目のP波検知時刻から2秒以内にそれらの合計が最小となる震源を最適解としました(図3)。線路近傍で発生した地震(震央距離約50km未満)のうち8割以上の地震において、上記手法で決定した震源(図3★)は、気象庁震源(図3●)との誤差が10km未満の範囲内に位置することを確認しました2)。
参考文献
- S. Katakami, S. Noda, M. Korenaga, E. Araki, N. Takahashi, N. Iwata, “Potential of Earthquake Strong Motion Observation Utilizing a Linear Estimation Method for Phase Cycle Skipping in Distributed Acoustic Sensing”, JGR Solid Earth, Volume129, Issue1, 2024(※)
- S. Katakami, M. Korenaga, N. Iwata, E. Araki, N. Takahashi, S. Noda, “Immediate and High-Precision Hypocentral Determination for Earthquake Early Warning Applications Using Distributed Acoustic Sensing”, Bulletin of the Seismological Society of America, 115, 2025(※)
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