EMC・無線測定用ワゴン車

1.はじめに

EMC・無線測定用ワゴン車は、鉄道沿線における電波の強さ、放送の受信品質、無線通信の伝送品質などを現地で測定するために導入されたものです。名称に含まれている“EMC”とは電磁両立性という意味です。研究所にこのような無線専用の測定車が最初に導入されたのは1977年度のことでした。本ページで紹介している測定車は4世代目で、ほぼ1年中、日本各地の沿線で活躍しています。

2.特徴

この測定車の大きな特徴は、測定用のアンテナを10mの高さまで上げることができる電動ポールを装備していることと、後部が測定室として改造されており、測定内容に応じて各種の測定器や無線機を自由に組み合わせて搭載できる測定台を装備していることです。また、発電機など外部からAC100Vを供給できるコネクタとフィルタを装備しているほか、車内のバッテリからAC100Vを供給するためのインバータも装備しています。この他、ケーブルを外に出すための防水構造の通線箱、夜間測定用の照明も備えており、この車があれば、どこでも電波の測定や無線通信の実験ができます。

3.用途

この測定車は、様々なEMCに関する測定のうち、鉄道が沿線の放送受信や無線通信に影響を与えていないか、あるいは逆に、鉄道が周囲環境から来る電波の影響を受けていないか、を測定するために使用されています。また、列車無線など鉄道で使用されている移動体通信の電波伝播やデータ伝送の実験にも使用されています。なお、EMCの測定評価試験に関しては、国際電気標準会議(IEC)から鉄道用の国際規格が発行されており、この測定車では、鉄道システム全体に対する規格(IEC 62236-2)と、鉄道車両に対する規格(IEC 62236-3-1)に対応した試験を実施できます。

参考文献

  1. 川崎邦弘:(研究開発七つ道具)EMC・無線測定用ワゴン車、RRR、Vol.69、No.5、pp.41、2012.05