28. 水分条件に応じたコンクリート橋りょうの長期変形挙動の予測手法

 鉄道コンクリート橋りょうの長期変形は、車両の走行性や軌道の保守に影響を及ぼします。
特に高速鉄道橋りょうにおいては、その影響が顕著となります。
構造形式の多様化や支間の長大化等の技術革新が進む中で、その変形を、供用期間全体にわたり推定する手法の重要性が高まっています。
また、気候変動や良質な建設材料不足等、建設・維持管理を取り巻く環境の変化をどのように設計実務に反映していくかについても対応が求められています。

 そこで、コンクリート内部に分布する水分量の経時変化を、拡散理論による水分移動解析に基づき算出し、その水分量に応じてコンクリートの収縮駆動力や変形量を100年先まで予測する、収縮ひずみ解析プログラムを開発しました(図1)。
水和等のコンクリートの物理・化学現象を巨視的に捉えることで、計算に必要な情報数が大幅に軽減でき、実務で計測可能な情報のみを用いて、水分条件や配合に応じて収縮ひずみを算出します。
この収縮ひずみを、鋼材や部材形状を考慮したはり要素を用いた構造解析ツール(線材解析)に入力することで、コンクリート橋りょうの長期変形量を算出します(図2)。
この手法の妥当性については、精緻な方法で算出した収縮ひずみや、実測した橋りょうのたわみと比較することで、確認をしています。

 本手法は、建設・維持管理の条件に柔軟に対応可能であることから、コンクリートの収縮に起因した橋りょうの長期変形に関する設計手法の高度化に寄与するものであり、収縮やクリープの影響を制御した合理的な新構造形式の提案や保守軽減への活用が期待できます。