30. しゅう動摩擦によるパンタグラフの不安定振動の低減手法

 列車が発車直後や停止直前に低速走行する際、パンタグラフすり板とトロリ線の摩擦係数が高くなると、パンタグラフに連続的な離線を伴う著大な不安定振動が発生する場合があります。
これにより列車が運転不能となったり、アークが発生してトロリ線の摩耗が進展したりする場合があります。
しかし、これまで不安定振動の発生メカニズムは解明されておらず、メカニズムに基づく対策も提示されていませんでした。

 そこで、パンタグラフの詳細モデルを用いた解析により、不安定振動は、摩擦係数が高い状況において上下振動と前後振動の固有モードが近接し、増幅することで発生することを明らかにしました(図1)。
このメカニズムに基づいて、不安定振動を低減するためのフローを提案しました(図2)。
詳細モデルによるFEM解析または実機による低速しゅう動試験により、著大な不安定振動が生じるかどうかを評価します。
さらに、モード解析や近接・増幅度の評価により対策が必要な固有モードを特定して、例えば板ばねを柔らかくする等構造変更することで、摩擦係数が高い場合においても不安定振動を低減できます(図3)。

 本手法により、すり板・トロリ線間のしゅう動面が荒れて摩擦係数が高い状況においても、安定してしゅう動できるパンタグラフの構造や設計パラメータを得ることができ、より安定的な輸送を可能とするパンタグラフを実現することができます。