29. 付随車における電力回生が可能な非接触ディスクブレーキ

 近年、列車運行の脱炭素化やエネルギー効率の高い車両の開発が期待されるとともに、消耗品の削減やメンテナンスの省人化も求められています。
付随車の軸ディスクブレーキを電気ブレーキへ置き換えることにより、エネルギー消費と消耗品を削減することが考えられますが、付随車に電動機やインバーター、歯車装置等の搭載が必要になり、導入コスト等に課題があります。

 そこで、インバーター等を用いないシンプルな回路構成により、付随車で簡易的な電気ブレーキを実現可能とする非接触ディスクブレーキ(図1)を提案しました。
この電気ブレーキでは、電磁石とコンデンサの共振現象によって電気を流すことでブレーキ力と回生電力を得ます。

 実現性を確認するため、原理検証試験を行った結果、共振による通電でブレーキと電力回生が可能なことを確認しました(図2)。
また、今後実機を設計する際に必要となる基礎的なデータを取得するため、実機大の直流電磁石による要素試験を行い(図3)、数百℃になるディスク温度とブレーキトルクの関係等を把握しました。
さらに、ブレーキ動作状態に応じて複雑に変化する電気的な特性に対して、所望の共振状態に設定するためのコンデンサ容量の決定方法等を考案しました。
これらの試験と検討結果を踏まえ、基本的な設計法を提案しました。

 本成果を基に、実機レベルでの性能評価と使用条件に合わせた詳細設計法の構築を進め、省エネで省メンテナンスな車両の実現に貢献する非接触ディスクブレーキの実現を目指します。