30. 新幹線パンタグラフ舟体の揚力変化メカニズムの解明
新幹線パンタグラフが安定して集電を行うためには、舟体(図1)に適正な揚力が作用するとともに、すり板摩耗時にも揚力が大きく変化しない舟体断面形状を選定する必要があります。その一方で、舟体断面形状の変更に伴う揚力変化メカニズムには未解明な点が多く、現状では、風洞試験等による試行錯誤により形状選定が行われているため、開発に要する時間とコストの効率化が課題となっています。
そこで、本研究では、新幹線パンタグラフに用いられる2 つの舟体形状を対象に、風洞試験と流れのシミュレーションを併用して揚力変化メカニズムを解明しました。具体的には、(ⅰ) 矩形舟体における前面傾斜による揚力調整手法を対象に、揚力が変化するメカニズムを解明するとともに、傾斜部位周辺の圧力と表面積から揚力変化量を推定する予測式を提案しました。風洞試験での妥当性確認の結果、予測式による推定値が実測値とよく一致することを確認しました(図2)。(ⅱ) 現用パンタグラフに広く用いられている段付き舟体を対象に、舟体断面形状と揚力特性の関係を調査した結果、すり板摩耗量の増加に伴う舟体前縁部の流れの形態の顕著な変化によって大きな揚力変化が生じることを解明しました。また、舟体前縁部の仰角によって流れの形態と揚力特性の関係を分類でき、すり板摩耗時の大きな揚力変化を避けられる仰角の範囲を明らかにしました(図3)。これらの知見を活用することで、舟体断面形状の設計および試験に要する工数を削減し、開発の効率化や揚力に起因する不具合の防止が可能となります。
