第345回 鉄道総研月例発表会

日時 2021年02月15日(月) から
場所 ウェブ配信(視聴無料)
主題 車両技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容


CASE展開環境に対応する車載パワートレーン技術の針路

鉄道車両で早くから個別技術の具現化がなされながらも、ここ数年の最新技術の開発と導入の面で自動車の変革の速さに学ぶべき包括技術がCASE(Connected:接続、Autonomous:自律運転、Shared & Service:シェアリングとサービス、Electric:電動化)である。CASE各項目で鉄道車両に導入済みおよび導入想定される技術を整理し、パワートレーン設計に関わる技術環境の動向変化ならびに対応すべき技術アイテムを示す。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.10 「車載パワートレーンとパワエレ機器を取り巻く技術環境の変化と対応」
 QR Vol.61 No.3 「Direction of Powertrain Technology for CASE Deployment in Railwai Vehicles」
 鉄道総研 車両News Letter No.25 「2030年に向けた鉄道車両技術アイテムのイメージ」

発表者
車両制御技術研究部 主管研究員 小笠 正道


燃料電池ハイブリッド試験電車の高性能化

水素エネルギーを活用し、省エネルギー化や環境負荷低減に貢献する次世代に相応しい鉄道車両として、燃料電池ハイブリッド電車の開発を行っている。これまで、燃料電池や電力変換装置をはじめとする各機器の小型化・高性能化を行い、加速性能を電車並みに向上させた実用に近い構成を実現した。本発表では燃料電池ハイブリッド電車の所内試験線を用いた走行評価結果について紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.34 No.5 「燃料電池ハイブリッド試験電車の高性能化」
 鉄道総研報告 Vol.31 No.6 「燃料電池電車のエネルギーシミュレーション手法」
 NewsRelease 「燃料電池ハイブリッド試験電車の基本走行性能を確認」
 NewsRelease 「新しい燃料電池ハイブリッド電車」

発表者
車両制御技術研究部 水素・エネルギー研究室 副主任研究員 小川 賢一


減速度フィードバックの機能追加によるブレーキ距離精度の向上

現状の鉄道車両のブレーキ制御系は開ループ制御で構成され、同じブレーキ操作でも雨天時などにブレーキ力が変動するため、運転士の操作やATOなどの機能がその変動を補うことでブレーキ性能を安定化させている。本発表では、列車の速度をフィードバックする閉ループ制御をブレーキ制御系に適用し、速度を積分した制動距離に基づく減速度の目標値に列車の減速度を追従させることでブレーキ力の変動を自動的に補償し、列車のブレーキ距離精度を向上させる手法について提案する。
 鉄道総研報告 Vol.34 No.12 「減速度フィードバックの機能追加によるブレーキ距離精度の向上」
 鉄道総研報告 Vol.23 No.4 「減速度フィードバック機能を備えたブレーキシステムの開発」

発表者
車両制御技術研究部 ブレーキ制御研究室 主任研究員 中澤 伸一


線路曲率照合による自車位置検出システムの開発

走行中に車上で観測する車体ヨー角速度と走行速度から算出する線路曲率を用いて自車位置を検出する手法を開発した。本システムでは、線路曲率データに空間フィルタを適用することで、車体の振動特性や軌道変位による影響を除去し、自車位置検出精度の向上と車上データベースのメンテナンス頻度の低減を可能とした。また、車上に保持する線路曲率データと異なる線路に列車が進入した場合や、長距離の直線走行時における検出精度低下防止策についても紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.10 「空間フィルタを用いた線路曲率照合による自車位置検出システムの開発」

発表者
車両構造技術研究部 走り装置研究室 副主任研究員 石栗 航太郎


小型スピーカと音響粒子速度センサを用いた車内騒音寄与度解析手法

乗客の快適性向上のため,車内騒音を効率的に低減するには,騒音評価点に対する車内各部位からの伝搬音の寄与度を把握することが重要である。そこで,音響粒子速度センサを用いて走行状態における内装パネル近傍の音響粒子速度を直接測定し,さらに定置において小型スピーカから発する音により内装パネルと受音点間における伝達関数を算出し,それらを組み合わせて,簡易な手順で寄与度を求める解析手法を考案した。本発表では,本手法の概要と定置加振試験における試験車両内での検証試験の結果について報告する。
 鉄道総研報告 Vol.33 No.10 「小型スピーカと音響粒子速度センサを用いた車内騒音寄与度解析手法」

発表者
車両構造技術研究部 車両振動研究室 副主任研究員 朝比奈 峰之


乗客傷害度と相関が高い車体減速度積分値を用いた衝突安全性評価法

衝突事故時の人的被害を軽減する車体構造は重要であるが、我が国の車体構造の設計基準には、衝突安全性を評価するための指標が明示されていない。そこで、様々な条件下での踏切事故を模擬したFEM解析を実施し、各条件での車体の減速度波形から、平均減速度(欧州基準)、最大減速度(米国基準)および減速度の積分値を算出するとともに、乗客の傷害値を算出し、これらの相関について検証した。その結果、欧米基準よりも乗客傷害度との相関が高かった減速度積分値を評価指標として提案したので紹介する。
 鉄道総研報告 Vol.34 No.12 「乗客障害度と相関が高い車体減速度積分値を用いた衝突安全性評価法」

発表者
車両構造技術研究部 車両強度研究室 主任研究員(上級) 沖野 友洋


変速機の振動を用いた異常摩耗状態監視手法の検証

ディーゼルエンジンや変速機などの駆動機器は、走行に必須な機器であることから、異常の兆候を早期に発見し、走行中の故障を防ぐことが望まれる。そこで、エンジンなどの駆動機器を対象に、振動による状態監視手法の研究開発を行っている。本発表では、台上試験機を用いて変速機内部の摩耗を促進するため、変速機の潤滑油にSiCを混入した異常模擬試験による、状態監視手法の有効性を検証した結果について報告する。
 鉄道総研報告 Vol.34 No.12 「変速機の振動を用いた異常摩耗状態監視手法の検証」

発表者
車両制御技術研究部 動力システム研究室 副主任研究員 髙重 達郎


感圧センサを内蔵した戸先ゴムを利用した車両の戸挟み検知システム

一般的な車両に搭載されている現用の戸挟み検知システムは、小さい異物を挟み込んだ場合の検知が困難であるため、感圧センサを内蔵した戸先ゴムを利用した新たな戸挟み検知システムを作製した。新たなシステムは、現用のシステムでは検知できない小さい異物や紐などの引きずりを検知でき、空振りの誤検知の発生確率も0.01%以下と低いことがわかった。発表では、作製した戸先ゴムによる挟み込みや引きずりの検知感度試験結果およびシステムの構成などを紹介する。

発表者
材料技術研究部 防振材料研究室 主任研究員 間々田 祥吾


圧電素子を内蔵した軸ばね防振ゴムによる輪重変動の測定

走行中の台車の状態監視やブレーキ時の制御等に利用することを目的として、台車の軸箱上に設置する軸ばね防振ゴムに圧電素子を内蔵したセンサ軸ばね防振ゴムを利用して簡易に輪重の変動を測定する手法を検討した。本発表では、センサ防振ゴムの基本構造について説明するとともに、鉄道総研の所有する台車に圧電素子を内蔵した軸ばね防振ゴムを組み込み、所内の試験線において走行試験を実施した結果について報告する。
 RRR Vol.77 No.12 「ゴム材料で車両の異常を検知する」
 鉄道総研報告 Vol.32 No.10 「鉄道における圧電ゴムを用いたセンシング技術」

発表者
材料技術研究部 防振材料研究室 研究員 太田 達哉