18. 車両制御回路用リチウムイオン電池の劣化評価手法

 一部の新幹線車両において、制御回路用の蓄電池として新たにリチウムイオン電池が採用されました。従来の鉛蓄電池などと比べて軽量で、かつ長寿命化が期待されています。
 このリチウムイオン電池の性能を長期にわたって維持するとともに、定期検査などにおける性能評価作業を省略するために、鉄道車両の制御回路という使用環境に適した劣化評価手法を開発しました。

 まず、当該リチウムイオン電池の劣化傾向を把握するために、実車両における温度環境と充放電の条件を模擬しながら劣化を促進させる基礎実験を実施し、蓄電池温度の変動を考慮しつつ、初期状態から大幅な劣化に至るまでの変化を予測する式を提案しました。
 劣化度の重要な指標である電池容量の予測値を実測値と比較したところ、高い精度で一致することを確認しました(図1)。
 また、運用開始後の蓄電池の劣化度を、定期検査などにおける測定を省略し、車両運用中の充放電データから簡便に算定するための劣化診断手法を提案しました。
 本手本手法による容量指標(微分容量:劣化度を示す値)の算定値と基礎実験で取得した実測値を比較した結果、高い相関を持つことを確認しました(図2)。

 開発した劣化度の予測手法は、同型電池の制御回路への適用に際し、設計段階における実使用環境に応じた寿命の予測に適用可能です。
 また、運用開始後の劣化度の診断については、車両記録データのノイズや多様な変動に応じたフィルタ処理を追加することで適用可能です。