台車牽引力を用いたブレーキ性能の評価手法

鉄道車両は、鉄のレール上を鉄の車輪が回転して走行するため、転がり抵抗が自動車等に比べて小さく、走行抵抗が少ない省エネルギな輸送機関として優れています。一方で、雨天時のようなレール湿潤条件下では、レール/車輪間の粘着係数が低下して高い制動性能が得られにくいという面を併せ持っています。

ここで、鉄道車両のブレーキ性能は、速度を演算して得られる停止距離や減速度を評価しますが、ブレーキ性能低下の要因には、粘着係数の他にブレーキ材の摩擦係数や滑走制御などが複雑に影響するため、速度波形のみからその要因を特定することは困難です。

そこで、台車牽引装置のひとつである一本リンクに働く力を用いてブレーキ力を測定する手法を開発しました(図1)。本手法は計測に伴う準備作業量を抑えながら、電気ブレーキと空気ブレーキのいずれにおいても高精度の測定が可能となる特長があります。

レール乾燥条件と人為的に散水を行ったレール湿潤条件の測定例を図2、図3に示します。レール乾燥条件では各台車ともに同等のブレーキ力を得ていますが、レール湿潤条件では滑走の発生により各台車のブレーキ力が低下していることが分かります。この際、編成としてのブレーキ性能低下はわずかなため、従来の評価手法ではこのような台車毎の特性を把握することが困難でした。現在、本評価手法を用いて制輪子や増粘着手法、あるいは滑走制御などの各種開発を進めています。

参考文献

  1. 嵯峨信一,宮部実,川村淳也,杉田裕伸,竹間克俊:一本リンク牽引力を用いたブレーキ性能評価手法,鉄道総研報告,第29巻,第2号,pp.23-28,2015.02