高減速度のための滑走制御方法の開発

1.研究の背景

安全のために停止距離を短縮するためには、より強いブレーキ力が必要です。しかし、鉄製のレールと車輪を使う鉄道は滑りやすく、単にブレーキ力を強めるだけでは、車輪が滑走して結果的に停止距離が延びてしまったり、固着(車輪の回転が停止したまま走行し続ける状態)によって車輪を損傷して車体や軌道にも大きな損害を与えてしまう危険性があります。そのため、滑りやすい環境でも常に安定したブレーキができるよう、滑走制御 (Wheel Slide Protection:WSP)が重要なはたらきを担っています。

そこで、高いブレーキ力を保つことと固着を防ぐ機能を両立させた、新たな検知方法を導入した滑走制御方法を開発しました。

2.新しい滑走制御方法

主な特徴は、以下の通りです。

  1. 現状よりも高い減速度を目指すために、すべりと接線力係数の関係をより活かす新たな滑走検知方法として、固着余裕時間に基づく条件を導入しました(図1)。
  2. 滑走検知時や回復期のBC圧の給排気を細分化し、滑走中にも高いBC圧を保持します。
  3. 全軸滑走の状態でも、固着を防ぐ検知感度を一定に保ちます(図2)。

3.実車試験における減速度向上効果

この新しい滑走制御を編成の一部に導入し、現車によるブレーキ試験を実施したところ、減速度が約7%向上しました(図3)。

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参考文献

  1. 中澤伸一、津留﨑淳:新しい検知方式を用いた滑走制御方法の開発、鉄道総研報告、Vol.25、No.1、pp.43-48、2011
  2. 中澤伸一:新しい滑走制御でブレーキ距離の延伸を防ぐ、RRR、Vol.71、No.8、pp.20-23、2014.08