まくらぎ間隔拡大に対応したバラスト軌道の設計・管理法

1. 背景

地域鉄道のバラスト軌道では、走行安全性確保のためPCまくらぎ化のニーズがあります。これを安価に実現するため、既設線のバラストや路盤条件および管理レベルを反映し、供用条件を考慮したまくらぎ間隔拡大の設計手法と、走行安全確保のための管理基準の算定手法を提案しました。

2. 設計法の概要

提案した設計法の概要は次のとおりです。 ① 細粒土が混入したバラストにおける軌道沈下量や、広いまくらぎ間隔に対応した道床横抵抗力を算定します。 図2に示した現行の設計標準の沈下式は、新品バラスト状態における軌道沈下の進みβを推定します。 本設計法では、図3に示す通り、細粒土の混入率を示す指標である0.075mmふるいを通過する細粒分の含有率Fcをパラメータとした係数α’を提案しました。それにより、設計標準の沈下式を用いて、様々な道床状態に応じた軌道沈下の進みβを推定することができます。

図2 現行の設計標準の沈下式

図3 細粒分含有率Fcを考慮した係数α'の提案

図4 提案した係数α'を用いた設計標準の沈下式

② まくらぎ間隔といった供用条件に応じたレール締結装置の設計作用を算定し、部材強度を照査します。

③ 新たに開発した浮きまくらぎ検出手法(軌道変位データと軌道諸元から数値計算により浮きまくらぎを検出する手法)を用いて、走行安全確保のための管理指標を定めます。

図8 走行安全確保のための管理指標の試計算例(通り変位)

図9 軌間拡大量と連続締結不良本数の関係

以上より、軌道整備レベルや整備頻度、巡視頻度などの線区の保守体制に応じて、走行安全性の維持が可能なまくらぎ間隔を設定することができます。

3. 設計法の活用

本設計法を用いて設計の結果を踏まえ、営業線のバラスト軌道上に実際にまくらぎ間隔が約1mの区間を設定して経過調査を実施しました。その結果、まくらぎ間隔拡大が軌道変位進みに与える影響は小さく、急進も見られないことを確認しました。 また、開発した浮きまくらぎ検出手法をLABOCSに搭載し、軌道検測データと併せて取得可能になりました。

図10 まくらぎ間隔拡大箇所の軌道変位の推移

図11 LABOCSへの実装状況

関連ページ

  1. まくらぎ間隔拡大に対応したバラスト軌道の設計・管理手法 【2019年度主要な研究開発成果】

参考文献

  1. 楠田将之、松本麻美、片岡宏夫:軌道変位データに基づく浮きまくらぎ検出手法、土木学会論文集A2(応用力学)、Vol.74、No.2、2018年(※)
  2. 楠田将之、伊藤壱記、張順智、園田佳巨:不均一支持のバラスト軌道の車両応答特性および高低変位に与える影響、構造工学論文集、Vol.66A、2020年(※)
  3. 弟子丸将、片岡宏夫、園田佳巨:軌道の支持状態がレール締結装置に作用する 荷重分散に及ぼす影響の研究、鉄道工学シンポジウム論文集、第22号、2018年7月

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