低温時のロングレール保守作業制限の評価法

1.現行のロングレール保守作業制限

多くの鉄道事業者では、在来線のロングレール区間でレール内方変位を防止するために低温時の軌道保守作業を制限しています(表1)。ただし、その制限のために道床交換の年間保守作業の平準化が困難となっていることから、新しい保守作業制限の評価法を開発しました。

2.新しい保守作業制限の考え方

低温時の保守作業で発生するレール内方変位の発生とレール軸力の変化を許容し(図1)、両者に以下の3つの制限を設けます。これらの制限を基に、任意の施工条件に対して低温時作業が可能か否かを判断する評価フローを提案しました(図2)。

  • 制限①レール軸力:座屈防止の観点から制限
  • 制限②レール内方変位(絶対変位):軌道と隣接構造の距離の制約から絶対変位を制限
  • 制限③レール内方変位(相対変位):軌道整備の制約から10m弦通り変位を制限

3.新しい保守作業制限の適用例

以下の施工条件では、現行の保守作業制限(表1)では作業ができませんが、新しい保守作業制限では曲線半径1200m以上で施工が可能です(図3)。

【施工条件】

  • 設定温度:30~35℃
  • 最低温度:0℃未満(冬季)
  • 施工延長L:10~15m
  • 10m弦通り変位制限の目安値v:10mm

参考文献

  1. 玉川新悟、西宮裕騎、纐纈智也:低温時のロングレール保守作業制限の見直しの提案、鉄道総研報告、第36巻、第3号、pp.11-16、2022.3