耐ノイズ性の高い低周波軌道回路

新型車両の開発では、軌道回路が誤動作を起こさないために、軌道回路種別毎に定められた妨害許容値を超える電流が車両から発生しないことの確認が必要です。しかし、妨害許容値が小さい軌道回路があること、軌道回路種別が多いことが、車両開発における障害の1つとなっています。そこで、妨害許容値を大きくできる新しい駅中間用軌道回路(中間軌道回路)と改良型長大軌道回路の2つを開発しました(図1)。

在来線の駅間で使用される中間軌道回路は、線区条件などに応じて多くの種類があります。この種類を減らすため、デジタルATCなどで実績があるMSK変調方式を用いて、妨害許容値が現行より大きく、一般的なほとんどの駅中間の軌道回路に適用可能な中間軌道回路を開発しました。これは信号高圧のような同期電源の設備が不要で、レールを用いて5種類の信号現示に対応した情報伝送が可能になる利点もあります。

中間軌道回路の一種である長大軌道回路は、軌道回路長が長く閑散線区などで使用されていますが、妨害許容値が特に小さいことが車両開発時における大きな課題となっています。新しく開発した中間軌道回路は、2km程度までの区間に適用可能ですが、最大5kmになる長大軌道回路区間への適用は困難であるため、変調器の追加と受信器の取替だけで妨害耐量を大きくする方式を開発しました。既存の送信器の出力を符号化した信号を送る方式(図2)を採用することで、送信器とケーブル類、現場機器をそのまま利用しつつ、図1に示すように妨害許容値を3倍に大きくすることができます。

どちらの軌道回路も試作装置による現地試験を行い、実環境下で稼動することを確認しています。