閑散線区用割出し可能転てつ機

1.はじめに

閑散線区では、割出し可能でばねにより分岐器の転換方向を自動的に復帰させる機能を持つ、発条転てつ機が多くの箇所で使用されています。これまで、発条転てつ機が使用されている多くの場所では、重量が比較的軽い37kg/mや40Nなどのレールが使用されていましたが、50Nなどの重いレールへの変更により、今まで以上に大きな転換力が必要とされています。しかし、発条転てつ機の転換力の増加は、車両による割出しに必要な力の増加につながるため、軽量な車両が走行する所での両立は困難です。また、発条転てつ機は、割出し走行時に「トングレールが鎖錠されない」「トングレールが最終位置まで転換されない」という、技術的に改善すべき課題も残されています。

また、発条転てつ機の転換不能対策として、発条転てつ機より転換力の大きい、電気転てつ機に置き換える方法もあります。しかし、出発信号機に進行現示を出す際に予め分岐器の転換方向を変え、所定の進路が確保できていることを確認する機能を連動装置の機能に組み込む必要があるため、大規模な信号設備の改修を伴います。

これらの課題を解決する方法として、踏み込み転換と割出し可能な転てつ機を組み合わせた閑散線区用の新しい転換システムを開発しました。

2.踏み込み転換

発条転てつ機が設置されている駅の連動装置は、分岐器の背向側から進入する出発信号機については転てつ機の開通方向にかかわらず、閉そくや在線状態などの条件が整えば青信号を出すことができます(図1)。これは、背向から走行する車両に対して、発条転てつ機の割出し転換機能により分岐器を安全に走行させることができるためです。

踏み込み転換は、発条転てつ機が用いられている駅の連動装置の論理を変えずに、開発した割出し可能転てつ機などの動力転てつ機を用いるために開発した転てつ機の制御の方法です。動作の概要を図2に示します。分岐器背向側から出発信号機に従って分岐器に接近する車両に対して、車両の接近を検知する、もしくは出発信号機が進行現示になることを条件として、転てつ機を反位に転換します。その後、分岐器の通過、もしくは駅構内からの列車進出を条件として、転てつ機を定位に復位します。車両の接近や進出の条件は、連動装置から取り出すことができる既存の条件を用いることが可能です。また、専用の列車検知装置を用いることにも対応できます。

動画 踏み込み転換のデモンストレーション

3.閑散線区用割出し可能転てつ機

踏み込み転換を実現するためには、車両がトングレールの上に到達するまでに転てつ機の転換が完了していることが必要です。加えて、車両の検知や転てつ機の制御ができない場合や転換が間に合わない場合でも、車両を安全に通過できることを担保することが必要です。そのためには、割出しを許容する機能が備えられた転てつ機と組み合わせて用いることが必要です。

そこで、図3に示す、高速な転換機構を有する割出し可能な転てつ機を開発しました。この転てつ機は、エアシリンダを用いて動作かんを高速で直接駆動する転換機構と、割出しを許容する鎖錠機構を採用しています。仕様を表1に示します。

本開発の一部は、国土交通省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施しました。

参考文献

  1. 潮見俊輔、五十嵐義信、長峯望、遠山喬:発条転てつ機の安全性と保全性を向上する、RRR、Vol.70、No.12、pp.20-23、2013.12