可搬形模擬負荷装置
電気転てつ機の動作が途中で停止する状態(転換不能)は、電気転てつ機が分岐器を動かす際の負荷(転換負荷)の増加などによって発生します。一部の電気転てつ機では、モータの電圧、電流などの動作状態を監視する「転てつ機モニタ」が導入されていますが、近年、転てつ機モニタのデータから転換負荷の大きさや転換不能の予兆を推定する手法の開発がすすめられています。この手法の検討や検証には、実設備のデータを用いることが重要ですが、転換不能が発生する場所や時期は予測ができないため、転換不能や転換負荷が大きいときの転てつ機モニタによるデータの収集には課題がありました。
そこで、エアシリンダにより分岐器の転換を阻害する方向に任意の力を作用させることで、転換負荷の増加や転換不能を繰り返し再現する「可搬形模擬負荷装置」を製作しました。図1に装置構成を、図2に本装置による模擬負荷の概要を、図3に設置例を示します。まくらぎの端部に装置を設置し、エアシリンダと分岐器の転てつ棒をロッドで接続して使用します。トングレールが模擬負荷装置を設置した側から離れる方向に移動するときにエアシリンダに空気圧を作用させて、転換動作を阻害する方向の負荷を転てつ棒に与えます。分岐器にあわせた位置調整などが必要ですが、転てつ機モニタが設置されている場所に運んで試験を行うことが可能です。また、発生させる力の強さはエアシリンダに作用させる空気圧により可変することができます。
図4に模擬負荷装置を用いたときの電気転てつ機に作用する負荷の例を示します。模擬負荷装置により、通常の分岐器の転換負荷に比べて大きな負荷が電気転てつ機に作用していることがわかります。本装置は、転てつ機モニタによる転換負荷の推定手法や転換不能の予兆検出手法の開発に活用しています。