信号論理設計支援の研究

1.はじめに

信号システムの装置には、連動装置、踏切制御装置、ATS装置などがあり、相互に関連して動作しています。また、これらの装置の動作は、信号機、転てつ器、軌道回路、踏切制御子、ATS地上子等の地上設備と複雑に関連しています。地上設備の設置は様々な形態を採り、設置形態に従った制御が必要となるため、装置毎の設計が必要となります。これらの設計は、ミスが事故に直結する可能性が高いため、正当性のチェックに多大な労力がかかり、システム化による効率の向上が求められてきました。設計の手順は、制御図表作成、結線図作成、論理検証と進めますので、統一的なシステムとしてそれぞれの段階毎に支援する研究を進めてきました。これまでに、中核となる連動装置の論理設計を支援するシステムを開発し、実用化しています(図1)。このシステムを基盤として、踏切やATSを含めた統合的な設計支援の研究を行っています(図2)。

2.制御図表作成支援

信号装置の設計として、装置毎に定められた制御図表の作成を行います。制御図表に基づいて、装置の動作が決定されますので、重要な作業となります。制御図表は、線路線形と地上設備の設置方法を明記した制御図と、地上設備間の関連を定めた制御表からなります。制御図表の作成には、列車の走行可能な進路や過走防護などの条件を把握しておく必要があります。作成の手順としては、制御図を作成してから制御表を作成しますが、制御表は制御図から一意に決定できる情報が多いため、支援としては制御図からの自動作成が基本となります。しかし、進路や過走防護区間などは図面からは読み取れないので、個別の条件設定が必要となります。このため、設計者の条件設定を最小化し、自動作成の効果を最大化できるような支援方法を研究しています。

3.結線図作成支援

信号の制御は、定位/反位、進行/停止、左開通/右開通、在線/非在線など2値による論理演算(AND, OR, NOT)を基本として行われます。2値論理演算は、リレー回路によって構築できますので、古くから自動制御が実現されてきました。コンピュータが発達した今日においても、プログラミング言語による方法と共に、2値論理演算による方法が行われています。2値論理演算は、論理式で表すとわかりにくいため、コンピュータによる論理演算においても、リレー回路相当の結線図で表します。結線図は、制御図表に基づいて作成しますが、制御装置の動作を最終的に決定するものであるため、緻密な作業となります。この結線図を自動的に作成する研究を行っています。

4.論理検証支援

信号装置の運用に当たって、最終的な論理検証を厳密に行う必要があります。検証手順は、基本的に制御図表に基づいて作成します。連動装置については、連動図表と対応関係によって標準化されていますので、それに従った検査手順の自動作成を実用化しています。一方、踏切制御装置については、複数列車の走行形態に依存した検証が必要なため複雑となり、標準化できていない部分もあるため、標準化に向けた研究を行っています。

また、実機での検証の前に、制御図表や結線図に基づいて、論理を模擬的に動作させて検証する方法も研究しています。特に、踏切制御においては、実機での検証が難しい場合があるため、有効な方法です。ユーザ操作により検証する方法と、自動検証の両方を検討しています。

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参考文献

  1. 関根俊:信号制御の論理的つながりを自動作成する、RRR、Vol.72、No.5、pp.24-27、2015.05
  2. 関根俊:信号保安装置論理設計の統合的システム化手法、鉄道総研報告、第27巻、第9号、pp.11-16、2013.09
  3. 関根俊:連動装置の制御論理を可視化する、RRR、Vol.68、No.5、pp.18-21、2011.05
  4. 関根俊:連動図表から結線図を自動生成するシステムの開発、鉄道総研報告、第25巻、第5号、pp.29-34、2011.05
  5. 関根俊、関根徳治:連動図表作成支援システムの開発、鉄道総研報告、第18巻、第7号、pp.27-32、2004.07