リスクにもとづく鉄道信号装置の評価法
1.概要
鉄道においては安全の確保が最優先ですが、列車の定時運行などの安定性(アベイラビリティ)も高いレベルにあることも同時に要求されます。今まで後者の視点も含んだ客観的な評価を行う手法はありませんでした。そこで、この両方の要求を同時に考慮しながら、多数の鉄道信号装置のうちのどれから優先的に改善すればよいかを判断する手法を提案しています。
2.特徴
この判断指標として、単位時間あたりの障害発生頻度と障害に伴う損失の積として定義されるリスクを用います。安全性に関わる損失として不安全指標(鉄道信号装置の障害によって発生する事故における1年当たりの死者数)、アベイラビリティに関わる損失として運行の停止時間を採用して鉄道信号装置ごとにリスクを計算することにより、両者を同一の指標で考えることができます。そしてリスクの大きな装置から優先的に改善を図り、効果的にリスクを低減できます。
列車本数や信号設備の異なるいくつかのモデル区間を設定し、ある仮定の下で鉄道信号設備ごとのリスクを試算した結果を下図に示します。図では、横軸を停止時間、縦軸を不安全指標にとり、装置のリスクの大きさをプロットする丸の大きさで示しています。
たとえば区間Aでは、連動装置のリスクが最大なので、この改善をまず図るべきことが示されます。一方区間Bでは、不安全指標の最大となる装置は連動装置ですが、リスクは信号機が最大となります。
このように、不安全指標が十分に小さいかどうかを確認しながら、リスクを用いて改善対象とする装置が一目で分かるように表示でき、線区の経営環境や投資環境に合わせた効果的な対策の実現ができます。
今後は、計算に用いるデータの精度を高めることで、具体的な線区での適用につなげていきたいと考えています。