旅客流動を考慮した対話型ダイヤ作成システム
1.はじめに
ダイヤ改正案の検討にあたっては、大混雑する列車を発生させない等、乗車率は重要な要素の一つです。そのため、担当者がダイヤ案を作成したその場で、各列車の乗車率を予測し、その結果を参考に担当者がダイヤ案を修正出来れば、ダイヤ作成作業が効率的なだけでなく、ダイヤ案の品質向上にも繋がるため、望ましいといえます。 しかし従来は、終日ダイヤに対する乗車率の推定に十数分程度を要するほか、ダイヤ作成システムと乗車率推定システムがそれぞれ独立したシステムとなっており、データ連携等にも課題がありました。そこで、列車ダイヤに対する高速な乗車率推定手法を考案したうえで、ダイヤ作成機能と乗車率推定機能を一体化したシステムを開発しました。
2.システムの特徴
旅客流動を考慮した対話的ダイヤ作成システムは、自動改札機等から収集できる旅客ODデータ(出発駅と到着駅の組み合わせごとに利用者の人数を集計したデータ)を用いて、ダイヤ作成機能で作成したダイヤに対する乗車率を推定するシステムです。このシステムは、①高速に乗車率を推定することができる、②推定結果を直感的に把握し、結果の画面上でダイヤ修正ができる、という2点の特徴をもっています。
高速化に関しては、従来の旅客の列車乗継経路推定アルゴリズムで行っていた重複する計算を削除し、高速に乗車率を推定するアルゴリズムを新たに考案しました(図1)。これにより、大都市圏内のある路線において終日ダイヤの乗車率推定を行う場合、従来は180秒程度を要していたものが、10秒程度の短時間で計算が可能なことを確認しました。
画面構成については、推定された乗車率の大小に応じて列車スジを色分けする、色付きダイヤ図を採用ことで、大混雑が予測される列車や区間を一目で特定可能としました。また、色付きダイヤ図上で列車スジをドラッグ操作すると時刻変更が出来る等、一連のダイヤ編集作業もこの画面上で可能な構成としています。これにより、図2に示すような、乗車率推定とダイヤ案修正を繰り返すことによる、ユーザー・システム間の対話型のダイヤ作成が可能となりました。
3.活用事例
このシステムは、ダイヤ作成担当者の意思決定支援に活用することができます。例えば、列車ダイヤにおける優等列車と普通列車の比率の変更や、列車の本数の変更(増便、減便)を実施した場合の乗車率をすぐ確認することができます。そのため、多くの改正ダイヤ案の中から乗車率のバラつきの少ないダイヤを絞り込むことができます。
本研究の成果である乗車率推定システムは、鉄道事業者で実用化されています。
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関連ページ
参考文献
- 國松武俊、平井力、富井規雄:マイクロシミュレーションを用いた利用者の視点による列車ダイヤ評価方法、電気学会論文誌D(産業応用部門)、Vol.130、No.4、pp.459-467、2010.04(※)
- 辰井大祐、國松武俊、石原裕介、坂口隆:高速な乗車率推定機能を組み込んだ対話的ダイヤ作成システムの開発、鉄道総研報告、第27巻、第9号、pp.29-34、2013.09
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