磁界が生物に与える影響

概要

平成24年8月より、鉄道分野においても磁界曝露による神経刺激作用防止の観点から、公衆が立ち入る場の商用周波数磁界について規制が施行されました。一方で、がんやその他の疾病の発症に対する磁界の影響や、鉄道環境にはさまざまな発生源があるため、その磁界の周波数が多岐にわたる事にも関心が持たれています。健康に対する安全性を検証するため、実環境中の数十倍~数万倍までの磁界強度を用いて磁界曝露による生体影響の程度と作用機構を検討することで、実環境における磁界曝露の生物影響評価を行っています。

特徴

● 強磁界を用いる

磁界の持つエネルギーは極めて弱いため、できるだけ強い磁界を用いて研究を行い、磁界曝露の生体への作用の有無を明らかにできるよう検討しています。

● 感受性の高い生物を用いる

強力な磁界環境や制御された磁界環境は狭い空間にのみ発生可能なため、微生物や細胞など小型で、かつ感受性の高い生物材料を用いる工夫をしています。

● 鉄道環境に特徴的な磁界を検討する

電気鉄道では、さまざまな周波数の変動磁界が時間的にも空間的にも複雑に重なり合うため、単一周波数の磁界に加え、複合的な磁界曝露の作用の有無も検討しています。

用途

  • 神経刺激以外の生体への作用は無いか極めて小さい影響であることを説明する資料となります。
  • この研究で用いた評価手法は、他の環境因子の健康リスクを評価することも可能です。

参考文献

  1. 吉江幸子、池畑政輝、鈴木敬久、多氣昌生:静磁界と変動磁界の複合曝露による変異原性の評価、鉄道総研報告、第25巻、第11号、pp.41-46、2011.11
  2. 池畑政輝、中園聡、和氣加奈子、鈴木敬久、吉江幸子、早川敏雄:微生物を用いた中間周波磁界の変異原性評価、鉄道総研報告、第22巻、第5号、pp.41-44、2008.05