車両接近時の鹿の行動調査

概要

鹿との衝撃事故対策のため、線路周辺における鹿の行動調査を行い、列車接近時の行動パタンを整理しました。また、鹿侵入防止柵には効果があることを統計学的に確認しました。更に、音を用いて鹿の危険な行動を抑制できるのではないかと考え、鹿が警戒声や車両の警笛音に対して注目行動を取ることを確認しました。

特徴

○ 鹿の行動分類

列車上から鹿の観察を行い8つに分類しました。これらのうち線路内逃走、立ちすくみ、直前横断において衝撃事故が発生していました(図1)。

○ 柵の効果検証

鹿対策として沿線に柵が設置されていますが、柵がない場所では年々事故件数が増加しているのに対し、柵のある場所では増加が抑えられていました(図2)。この差は統計的にも有意であることを確認しました。

○ 音に対する反応

鹿に対して警戒声を吹鳴し、その反応を観察しました。鹿は警戒声に気がつくと音がした方角を注視する注目行動をとることが分かりました。

用途

柵は鹿との衝撃事故に対して効果があることを確認し、また、鹿の警戒声が対策に利用できる可能性を示しました。ここで得られた知見をもとに、対策の策定を支援していきます。

本研究は(一社)北海道開発技術センターとの共同研究として実施しました。また東北職業能力開発大学校山川晃准教授と一般財団法人奈良の鹿愛護会の協力を得て行いました。

参考文献

  1. 志村稔、潮木知良、京谷隆、中井一馬、早川敏雄:車両接近時の鹿の行動と音による行動制御の可能性、鉄道総研報告、第29巻、第7号、pp.45-50、2015.07