鉄道地震被害推定情報配信システム(DISER)

 地震後の早期の運転再開や効果的な設備点検等のための情報提供を目指して、地震直後に鉄道沿線の地震動分布や構造物被害を推定して情報提供を行う、鉄道地震被害推定情報配信システム(DISER:Damage Information System for Earthquake on Railway)を開発し、運用しています1),2)(図1)。
 このシステムでは、地震直後に公的機関が発表する地震情報(気象庁の緊急地震速報や、国立研究開発法人防災科学技術研究所のK-NET地震動指標値データ)と鉄道総研が独自に作成した表層地盤の地盤増幅特性のデータベース3)に基づき、地盤の塑性化の影響を考慮4)したうえで地震動の空間分布を即時に推定します(図2)。推定する地震動指標は、鉄道の運転再開判断に用いられる警報用最大加速度、計測震度、SI値の3種類で、その推定誤差は計測震度で±0.6程度です(図3)。また、事前に鉄道構造物の情報(構造物の揺れやすさや強さなどの指標)を登録しておくことで、構造物被害判定図(ノモグラム)を利用した構造物被害ランクを算定5)~7)することも可能です(図4)。これらの情報は、地震後の早期運転再開に向けて、構造物点検の優先順位付けや、駅間に停車した列車の引き抜き判断等に活用することができます。

 本システムで推定される面的な地震動分布情報はメール登録により無料で閲覧可能です。また、鉄道路線に沿った線的情報は「鉄道地震被害推定情報配信システム利用規約」に従い、申し込み、登録いただくことで利用可能になります。さらに、鉄道事業者の所有する地震計データを取り込んで活用する等、ご要望に応じて独自のシステムを構築することも可能です。

 なお、本システムで使用する地震動指標データは国立研究開発法人防災科学技術研究所との協定に基づき直接提供を受けているものです。

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参考文献

  1. 山本俊六,岩田直泰,岡本京祐,坂井公俊,室野剛隆:地震情報公開システムで地震後の早期復旧を支援する,RRR,Vol. 73,No. 3,pp.16-19,2016.
  2. 川西智浩,岩田直泰,坂井公俊,山本俊六,室野剛隆,青井真:鉄道用地震情報公開システムによる沿線の揺れ・被害の把握,日本地震工学会誌,No. 36,pp.21-24,2019.
  3. 田中浩平,坂井公俊:離散的な土質情報を活用した面的な地盤固有周期の推定精度向上,鉄道総研報告,Vol.31,No.7,pp.17-22,2017.
  4. 野上雄太,坂井公俊,室野剛隆,盛川仁:表層地盤と入力波の周期特性を考慮した表層地盤での地震増幅率の評価,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.68,No.1,pp.191-201,2012.
  5. 室野剛隆,野上雄太,宮本岳史:簡易な指標を用いた構造物および走行車両の地震被害予測法の提案,土木学会論文集A,Vol.66,No.3,pp.535-546,2010.
  6. 坂井公俊,室野剛隆:地震動の最大加速度と最大速度を用いた土木構造物の地震被害推定ノモグラムの改良,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.71,No.4(地震工学論文集第34巻),pp.I_32-I_39,2015.
  7. 坂井公俊,室野剛隆,京野光男:鉄道盛土の地震被害簡易推定手法の提案,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.68,No.3,pp.542-552,2011.