列車内における旅客の異常状態の検知手法

1.概要

 近年、列車内やプラットホームにおいて不審者が他の旅客に危害を加える事件が発生しています。このような事件を受け、鉄道事業者では列車内やプラットホーム上へ監視カメラの設置を進めるなどの対策が進められています。当研究室では、さらなる安全性の向上を目的として、列車内やプラットホーム上における旅客の安全を脅かす異常状態の発生を早期に検知するシステムを開発しています。

2.システムの構成

 提案するシステムの構成を図1に示します。本システムは、(1)列車内カメラ映像の取得、(2)旅客の異常状態の検知、(3)乗務員・指令所への通知 の3つの処理から構成されます。
 まず、列車内に設置されたカメラから映像を取得し、処理装置まで映像を伝送します。続いて、処理装置を用いて列車内カメラ映像を解析することで旅客の異常状態を検知します。最後に、異常が検知された場合、乗務員室のモニタや指令所へ通知します。これにより、列車内における旅客の異常状態を早期に発見することが可能になり、迅速な対応に繋げることで被害の最小化を図ります。

3.検知手法

 旅客に危険が及ぶ可能性のある異常な状態を自動で検出し、通知することを目指します。しかし、異常という状態を厳密に定義することは困難です。そこで、旅客の様子が通常とは異なる状態であることを捉えることで、異常な状態を検出する手法を研究しています。
 具体的には、走行中の列車内において、通常時における旅客の乗車位置は図2上部に示したようにおおむね均等であることが想定されます。一方で、列車走行中に不審者が刃物を振り回すなどの異常事象が発生した場合、旅客は身の安全を確保するために不審者から離れようとする行動を取ることが考えられます。その結果、図2下部に示したように、旅客の移動速度が急激に増加し、乗車位置に偏りが発生します。危険物を直接検知する手法に加えて、このような旅客全体の行動に着目することで異常発生の兆候を検知する手法を提案しています。

参考文献

  1. 高橋宏侑、羽生奈央、長峯望:列車内カメラを用いた乗車位置の変化による異常検知手法、電気学会研究会資料、交通・電気鉄道研究会、TER-25-078(2025)
  2. 高橋宏侑、羽生奈央、長峯望:列車内カメラを用いた異常検知手法、電気学会産業応用部門大会講演論文集、5-7(2025)