列車内における旅客の異常行動の検知手法
1.概要
鉄道の車内やプラットホームにおいて、旅客が他の旅客に危害を加える事件が発生しています。このような事件を受け、鉄道事業者では列車内やプラットホーム上への監視カメラの設置を進めるなどの対策が進められています。画像解析研究室では、さらなる安全性の向上を目的として、列車内やプラットホーム上における旅客の異常状態の発生を迅速に検知するシステムを開発しています。
2.検知手法
旅客に危険が及ぶ可能性のある異常な状態を自動で検出し、通知することを目指します。しかし、異常という状態を厳密に定義することは困難です。そこで、旅客の様子が通常とは異なる状態であることを検出することで、異常な状態を検出する手法を研究しています。
具体的には、走行中の列車内において、通常時における旅客の乗車位置は図1上部に示したようにおおむね均等であることが想定されます。一方で、列車走行中に不審者が刃物を振り回すなどの異常事象が発生した場合、旅客は身の安全を確保するために不審者から離れようとする行動を取ることが考えられます。その結果、図1下部に示したように、列車内の旅客の乗車位置に偏りが発生します。このような旅客全体の行動に着目することで、異常発生の兆候を検知する手法を提案しています。
図1 提案手法の概念
参考文献
- 高橋宏侑、羽生奈央、長峯望:列車内カメラを用いた乗車位置の変化による異常検知手法、電気学会研究会資料、交通・電気鉄道研究会、TER-25-078(2025)