鉄道用超電導磁気エネルギー貯蔵システムの開発

1.概要

近年、省エネの観点から回生ブレーキを搭載した電車が増加しています。回生ブレーキとは、ブレーキをかけるときにモーターを発電機として作用させることで発生した電力を架線に返し、その電力を他の電車が使用することで制動力を得るブレーキです。しかし、近くに回生電力を受け取る負荷(加速中の電車など)がなければ回生ブレーキは作用せず、回生失効となります。そのため、近くに負荷がない場合にこの回生電力を一時的に貯蔵し、必要時に放出する超電導磁気エネルギー貯蔵(SMES)システムの研究開発を進めています(図1、2)。SMESとは、損失なく電流を流し続けることができる超電導の特性を活かし、超電導線材からなるコイルを含むループ回路に電流を流し続けることで電力を磁気エネルギーとして貯蔵するものです。従来の化学エネルギーとして電力を貯蔵する電池とは異なり、SMESには長寿命で、短時間に大電力を繰り返し充放電可能であるという鉄道システムに合致した特長があるため、SMESを鉄道用電力貯蔵装置に適用することを目指し、研究開発を進めています。

参考文献

  1. 富田優, '高温超電導材料の開発と応用研究の取り組み', RRR 78-1, 4 (2021)
  2. 富田優, JRガゼット2021年8月号, 56 (2021)