超電導き電システムの開発
1.超電導き電
直流電気鉄道には、車両に電気を送り届けるき電線の電気抵抗に起因する、回生失効や送電損失、電圧降下などの課題があります。これら課題の解決に向け、電気抵抗ゼロで送電が可能な超電導技術をき電線へ適用することを目指し、超電導き電システムの開発を進め、営業線における実証試験を実施しています。
2.超電導ケーブルの開発
鉄道システムに適合する超電導ケーブルの開発に取り組んでいます。超電導材料の評価結果をもとに超電導ケーブルを試作し(図1)、通電試験や課電試験などにより鉄道用途に必要な性能を有していることを確認しています。特に通電試験においては、最大で16 kAの通電容量を実現しました。
3.接続技術
運搬上の制約から、超電導ケーブルの1本あたりの長さは500 m程度となります。都市部の変電所間隔は数 kmであるため、導入の際は現場でこれを接続していく必要があります。そのため、鉄道現場における施工性を考慮した、超電導ケーブルの接続技術の開発に取り組んでいます。
4.冷却技術
長距離にわたる超電導ケーブルを安定冷却するための冷却システム、およびその構成機器の開発を行っています(図2)。構成機器として、冷媒を冷却する冷凍機、冷媒を圧送する循環ポンプ、冷媒を保冷する断熱管の開発を重点的に行いました。そして、それぞれ開発した機器を組み合わせた長距離冷却システムを宮崎実験センターに構築しました(図3、4)。現在はkm級の冷却実証を進めており、今後更に長くしていく計画です。
5.超電導き電システムを用いた走行試験
超電導き電システムを鉄道に適用するため、同システムを用いた車両の走行試験を実施しました(図5-7)。所内の試験線で試験した後、伊豆箱根鉄道駿豆線、東京さくらトラム(都電荒川線)、東京メトロ丸ノ内線、中央線の各路線でそれぞれ試験しました。試験結果はいずれも良好で、鉄道現場における超電導き電システムの有効性を実証しました。
6.謝辞
本研究の一部は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「戦略的イノベーション創出推進プログラム(S-イノベ) (JPMJSV0921)」・「未来社会創造事業(JPMJMI17A2)」、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託・助成事業、国土交通省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施しました。
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参考文献
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