21. 新幹線車両向け上下制振制御手法

 最近の新幹線車両には、ほぼ全ての車両に左右振動制御装置が搭載され、乗り心地が大幅に向上しています。その結果、上下方向の振動が大きく感じられることがあり、対策が必要になってきています。
 上下方向の振動は、車体が一体で動く「剛体振動」に加え、車体の変形を伴う「弾性振動」があり、いずれも乗り心地に大きく影響します。
 そこで、剛体振動および上下弾性振動の両方に対応した、新たな制振制御手法を開発しました(図1)。

 軸箱-台車枠間に可変減衰軸ダンパーを、台車-車体間に可変減衰上下動ダンパーを取り付け、車両の振動に合わせて制御を行います。前者の制御では弾性振動を、後者の制御では主に剛体振動を低減します。
 さらに、これらのダンパーに加えて、台車-車体間に新たに開発した応答性の高い上下アクチュエーターを組み合わせ、剛体振動・弾性振動の双方をさらに低減するように制御します。
 この手法により、それぞれの制振作用を補い合って、優れた振動低減・乗り心地向上効果を得ることができます。また、これら3種類の制御デバイスは単独もしくは任意の組み合わせで使用でき、求められる乗り心地向上効果とコストに応じて柔軟に対応できます。

 この手法の有効性検証のため、装置を新幹線相当車両に取り付けて実走行を模擬した加振試験を車両試験台で実施したところ、乗り心地レベル(LT値)で最大4dB以上の乗り心地向上効果が得られることを確認しました(図2)。