22. 新幹線速度向上に向けた空力ブレーキ

 新幹線のさらなる安全性向上に資する停止距離の短縮は、常に重要な課題です。特に、雨や雪などの気象条件により車輪とレール間の粘着力(摩擦力)は低下しやすいため、地震などの非常時にブレーキ力を補完する空力ブレーキ装置を新たに開発しました。
 本装置は走行中の列車に働く空気抵抗を一時的に増加させて車両を直接減速させる非粘着方式のブレーキで、使用時は空気抵抗を十分に得ながら、通常時は客室に影響を与えないように小さく格納できることが特長です。

 開発品は2枚1組の抵抗板に掛かる空気抵抗の差分を利用して走行風で自立可能な機構を組み込み、装置の厚さ65mm、質量36kgの小型・軽量な構成を実現しました(図1)。
 試作機を用いて400km/hの風洞試験を実施し、1台あたり2.3kN(トンネル時3.5kN)の最大抗力が動作指令から0.3秒の短時間で得られること(図2)、400km/hでの長時間送風(累計4時間)と連続動作において耐久性に問題が無いこと、格納時に空力騒音が生じないことを確認しました。また、低温・凍結時の動作や鳥などの衝突に対し安全面の問題がないことを確認しました。

 10両編成の列車屋根上に搭載した場合の数値流体解析を行い(図3)、装置の配置を調整して編成全体での抗力を最大化することにより、360km/h以上からの停止距離を約1割短縮できる可能性を示しました。